旧国民年金法の遺族基礎年金性差は「合憲」 最高裁、国の裁量権認める
ロー・フォーラム 裁判と争点(法学セミナー)| 2018.11.13
毎月、全国の裁判所で数多くの判決や決定が下される中から、私たちの社会に問題を提起する判決、法律学上の議論に影響を及ぼす判決など、注目の裁判を毎月ひとつずつ紹介します。
月刊「法学セミナー」より、毎月掲載。
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(毎月中旬更新予定)
◆この記事は「法学セミナー」767号(2018年12月号)に掲載されているものです。◆
家計の担い手を亡くすと支払われる遺族基礎年金の受給資格を「妻または子」に限定していた改正前の国民年金法の規定が、法の下の平等を定めた憲法14条に違反するかが争われた訴訟の上告審判決で、最高裁第三小法廷(岡部喜代子裁判長)は9月25日、この規定を「合憲」とする初判断を示した。その上で「母子家庭と父子家庭の間に差をつけるのは不当だ」と訴えた原告側の請求を退けた。
国民年金法は2012年、家族モデルの多様化などを背景に改正され、遺族基礎年金の受給資格は「配偶者または子」となった。だが、14年4月の施行前に死別した場合は改正前の規定が適用され、「妻または子」にしか支給されない。11年の東日本大震災で父子家庭になった人も対象外にされた。
日本弁護士連合会は13年12月、厚生労働相に対し、改正法の施行前に死別した父子家庭に支給しないのは男女間の平等に反し、憲法に違反すると勧告。「父子家庭になった時期によって不平等が生じている。施行前に死別した父子家庭にも支給すべきだ」と是正措置を求めた。厚生労働省によれば、遺族基礎年金は16年度末現在、6581人の男性配偶者が受給している。訴訟では、過渡期に死別を余儀なくされた父子家庭の人たちをどう救済するか、が問われていた。