(第3回)欧州中央銀行、量的緩和停止へ
EUの今を読み解く(伊藤さゆり)| 2018.12.27
2019 年は EU にとって、イギリス離脱のほか、5 年に 1 度の欧州議会選挙、それに伴う EU の行政執行機関・欧州委員会のトップにあたる委員長の交代と体制の刷新、さらに首脳会議常任議長(通称、EU 大統領)、欧州中央銀行(ECB)総裁も交代するという大変革の年です。このコラムでは、こういったイベントを軸に EU の今を読み解いていきます。
(毎月下旬更新予定)
欧州中央銀行(ECB)が 12 月 13 日に開催した政策理事会で、国債等の資産を買い入れる量的緩和の停止を決めた。
ECB が量的緩和政策を本格的に開始したのは 2015 年 3 月のこと。日本型のデフレのリスクが高まっているとの判断から導入した政策だ。この時期のユーロ圏では、2008 年 9 月の世界金融危機の後、ユーロ圏内に広がったギリシャに端を発する債務危機が沈静化し、景気は回復局面に入っていた。しかし、インフレ率は ECB が目標とする「2%近く」から下方に乖離し続け、15 年の始めにはマイナスになっていた。世界的な原油価格の低下が、持続的に物価を押し下げたことが直接の原因だ。さらに、ユーロ圏の経済は、景気の底入れからおよそ 2 年が経過していたが、実質 GDP の水準は、ようやく 2008 年初の世界金融危機前のピークを回復したばかり。失業率も低下に転じてはいたが、世界金融危機前の 7 %台に対して 11 %台と高留まり、労働市場になお余剰(スラック)が残っていた。外部環境や天候などの事情によって変動しやすいエネルギーと食品を除いた基調的なインフレ指標であるコア・インフレ率も 1 %を割込んでいた。政策対応を怠れば、デフレのスパイラルに陥り、抜け出せなくなるとの危機感があった。