(第6回)ヨハン・ベルヌーイの美しい発見

数学の泉(高瀬正仁)| 2019.03.04
数学に泉あり。数学は大小無数の流れで構成されていて、今も絶え間なく流れ続けている雄大な学問ですが、どの流れにも源泉があり、しかもその源泉を作った特定の人物が存在します。共感と共鳴。数学の泉の創造者たちの心情と心を通わせることこそが、数学を理解するという不思議な体験の本質です。そこで数々の泉を歴訪して創造の現場に立ち会って、創造者の苦心を回想し、共感し、共鳴する糸口を目の当たりにすることをめざしたいと思います。

(毎月上旬更新予定)

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ベルリン王立科学文芸アカデミーの『紀要』(Histoire de l’Académie Royale des Sciences et des Belles-Lettres de Berlin, Avec les Mémoires pour la même Anne, tirez Registres de cette Academie)の第5巻(1749年.1751年刊行)に,139頁から179頁にかけてオイラーの論文

[E168]「負数と虚数の対数に関するライプニッツとベルヌーイの論争」

が掲載されていますベルヌーイというのはここではベルヌーイ兄弟の弟のヨハンのことで,ベルヌーイは負数と虚数の対数とは何かというテーマをめぐってライプニッツと論争を続けました.遺されている往復書簡を参照すると,1712 年 3 月 16 日付の書簡(ライプニッツからベルヌーイへ)から 1713 年 6 月 7 日付の書簡(ベルヌーイからライプニッツへ)にいたるまで,それぞれ 5 通ずつ,計 10 通の書簡中に関連する記述が読み取れます.決着のつかないまま立ち消えになりましたが,後年,ヨハン・ベルヌーイを師匠にもつオイラーがこの論争を取り上げて1篇の論文を書き,対数の本性を明るみに出すことに成功しました.対数の本性とは何か.それは「無限多価性」という,実に不思議な属性でした.

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