(第1回)澤田康幸さん:大学教授からチーフエコノミストへ
毎号話題の人をお訪ねして、研究や仕事についてインタビューす
(偶数月下旬更新予定)
雑誌収録版:『経済セミナー』2019年4・5月号(通巻707号)「この人を訪ねてVol.13 大学教授からチーフエコノミストへ」
インタビュー日:2018年12月25日
プロフィール
澤田康幸(さわだ・やすゆき)
アジア開発銀行チーフエコノミスト、東京大学大学院経済学研究科教授。
専門は開発経済学。
慶應義塾大学経済学部卒業、大阪大学大学院経済学研究科修士課程修了、東京大学大学院総合文化研究科修士課程修了、スタンフォード大学経済学部博士課程修了(Ph.D.取得)。東京大学大学院総合文化研究科教授、同経済学研究科教授等を経て、2017年より現職。
著書:『基礎コース 国際経済学』(新世社、2003年)、『はじめて学ぶ国際経済』(共著、有斐閣、2010年)、『自殺のない社会へ』(共著、有斐閣、2013年)等多数。
1. アジア開発銀行での仕事
―― 2017年春にアジア開発銀行のチーフエコノミストに就任されました。まずは、そこでのお仕事についてお聞かせください。(聞き手:経済セミナー編集部)
澤田 アジア開発銀行(ADB)は、1966年にアジア地域、アメリカ、ヨーロッパの国々の協力によって設立された国際金融機関です。アジア太平洋地域の発展と貧困削減、そして地域全体の協力関係構築のため、開発資金が不足している域内の途上国に対し官民の両方のチャネルを通じて資金面での支援や、よりよい政策のための技術協力、知見等を提供してきました。
活動の柱の1つは、各国のインフラ整備の資金や政策への需要に応えることです。加えて、教育セクターや保健医療セクター等、民間資金が届きにくい部門へ、資金面のみならず、知識・技術面での支援を提供するのが主な活動です。これらの活動から、ADBはしばしばアジア各国の「ファミリー・ドクター」と呼ばれています。
私は現在、ADB本部のあるフィリピンのマニラで勤務し、「経済調査・地域協力局」(Economic Research and Regional Cooperation Department)の局長兼チーフエコノミストとして、約100名のスタッフのマネジメントを担当しています。スタッフの約半分がエコノミストで、もう半分が現地フィリピン人のサポーティング・スタッフです。エコノミストは、アジア、北米、ヨーロッパとさまざまな地域から集まっており、非常に国際色豊かな職場です。
同局は2019年1月に再編され、オペレーション・サポート課、マクロ経済課、経済地域統合課の3つの課で構成されています。