(第7回)2度の延期で英国のEU離脱はどうなるか
EUの今を読み解く(伊藤さゆり)| 2019.04.29
2019 年は EU にとって、イギリス離脱のほか、5 年に 1 度の欧州議会選挙、それに伴う EU の行政執行機関・欧州委員会のトップにあたる委員長の交代と体制の刷新、さらに首脳会議常任議長(通称、EU 大統領)、欧州中央銀行(ECB)総裁も交代するという大変革の年です。このコラムでは、こういったイベントを軸に EU の今を読み解いていきます。
(毎月下旬更新予定)
4 月 10 日、EU 首脳会議が 2 日後に迫っていた英国の EU 離脱の期限の延期を決めた。当初の期限は 3 月 29 日で、延期は 2 度目。新たな期限はメイ首相が要請した 6 月末よりも長い 10 月 31 日となったが、それ以前にも、英国議会が離脱協定を承認し、必要な法律上の手続きが終われば離脱となる。
2 回の期限延期で、大きな混乱を引き起こし兼ねない「合意なき離脱」はとりあえず回避したが、英国が離脱協定を承認するか、離脱意思を撤回しなければ、11 月 1 日に「合意なき離脱」は起こり得る。本来あり得ない選択肢が、常に可能性として残存していることこそが、この問題の本質だ。