『待機児童対策—保育の充実と女性活躍の両立のために』(編著:八田達夫)
序章 待機児童対策の展望
はじめに――本書のねらいと構成序章 待機児童対策の展望
ここ十数年、女性の労働市場参加の増大に伴い、保育の需要が急速に伸びた。たとえば、全国の30~34歳の女性の労働力率は、2007~2017年の10年間に、64.0%から75.2%にまで10%ポイント以上増えた(厚生労働省雇用環境・均等局、2017)。この結果、待機児童が大幅に増え、社会問題化した。
国および各自治体はその間に懸命の努力をし、待機児童数を減らすことに成功してきた。横浜市は林文子市長のもと、2013年には待機児童数ゼロを達成した。東京都は小池百合子都知事のもと、2017年から2018年にかけて待機児童数を約4割減らした。また、大阪市も2017年から2018年にかけて吉村洋文市長のもと、待機児童数を大幅に減らした。
これらに代表されるような各自治体の待機児童対策は、どのように行われてきたのだろうか。また、これらの待機児童対策は、今後も効果を持ち続けるのだろうか。これらの疑問に答えるためには、めざましい成果を上げた自治体でどのような努力が行われたのかを、当事者たちに詳しくヒアリングする必要がある。また、国に規制改革を提案した保育事業者の声を直接聞くことも重要である。これらはすべて、将来の待機児童対策の基本的なあるべき姿を探るために、不可欠な作業である。
本書の第I部(第1~3章)、第II部(第4~6章)では、主として2010年以降に行われた待機児童対策の関係者へのインタビューに基づき、各々の問題意識や改革への提案、さらには先進的な施策についてまとめている。第Ⅲ部(第7、8章)ではそれらインタビューを受け、日本の保育政策について改めて議論する。第7章では、八代尚宏氏に介護政策との比較を中心に保育政策全体の問題点を指摘していただき、第8章では八田が望ましい保育政策を提示し、それに向けた現実的な改革を提案する。
本書の第1~6章で取り上げるインタビューの概要は、本章2-2項でまとめている。その前の第1節および第2節の2-1項では、待機児童問題がなぜ発生し、2010年までにどのような対策がとられてきたかを展望する。第3節は、本章のまとめである。
1 認可保育所をめぐる問題
1-1 待機児童とは、「認可保育所等」に入れない児童
保育所の分類
2001年までは、待機児童とは、「入所・利用資格があるにもかかわらず、認可保育所に空席がないために入所できず、入所を待っている児童」と定義されてきた。認可保育所とは、国から手厚い補助が出ている保育所である。
その後、他にも国ではなく自治体から手厚い補助の出る保育所(これを本書では「認証保育所」と呼ぶ)や、「認定こども園」のように国から手厚い補助が出る認可保育施設もできたので、そのことを勘案して、現在では待機児童とは、「入所・利用資格があるにもかかわらず、認可保育施設あるいは認証保育所に空席がないために入所できず、入所を待っている児童」のことを指している1)。ここでは、日本の保育施設を分類して、何が「認可保育所」であり、何が「認証保育所」であるかを示すことにしよう。
(1)認可保育施設
日本の保育所は、大きく「認可保育施設」と「無認可保育施設(認可外保育施設)」の2つに分類される。
さらに認可保育施設は、表0-1の (1) が示すように、「認可保育所」と、「それ以外の認可保育サービス」に分かれる2)。しかし、1947~2006年は、保育施設は認可保育所のみで構成されていたため、現在でも認可保育施設の大部分は認可保育所である。このため、以下ではまず、認可保育所が何であるかを説明する。
認可保育所とは、児童福祉法35条3項に基づき、施設の広さ、保育士数などの設置基準を満たし、都道府県知事によって認可された施設を指す。認可保育所はいずれも、国の手厚い補助を受けている。これによって、保育料は月額2~3万円ほどに抑えられている(保護者の年収が500万円の場合)。
認可保育所に申し込んだ児童の入所選考は、一定の基準に基づいて行政が決めている。認可保育所は、生活保護など他の福祉政策と同様に、行政がその地域の福祉を必要とする人々の数を把握し、それにあった量のサービスを提供する、という制度で、いわば「配給制度」である。したがって、認可保育所と保護者が直接入所の契約をするのではなく、保護者は自治体が指定する認可保育所に子どもを預けなければならない。
都心部では認可保育所の数が足りていないので、保護者は順番待ちで直ちに入ることができないケースが多い。入所できる人はラッキーである。
一方、認可保育所の質は設置基準によって担保はなされているが、保育料一定のもとで、自治体が入所先を配分するため、認可保育所には、保護者の要望への対応を通じた質の向上に努めて申し込みを増やそうというインセンティブが乏しい構造となっている。
(2)無認可保育施設
認可保育施設に入所できない場合、保護者が家庭で育てるか、無認可保育施設に預けることになる。無認可保育施設は、横浜市の横浜保育室や東京都の認証保育所のような自治体の独自事業と、それ以外に分かれる。本章では、自治体の独自事業を便宜上総称して「認証保育所」と呼ぶ3)。
横浜保育室でも東京都認証保育所でも、児童の年齢ごとに児童1人当たり保育に携わる人の数は認可保育所と同じであるが、そのうち保育士資格保有者の割合は、横浜保育室の場合には認可保育所の3分の2、認証保育所の場合には6割である。また、これら認証保育所の保育料は認可保育所より高いが、受け入れ時間帯の柔軟性や、教育内容の多様性などのメリットがある。
認証保育所の場合は、自治体からの補助が受けられるため、それ以外の無認可保育施設より保育料が安い(東京都の場合、都から手厚い補助を得ている東京都認証保育所でも、月額保育料は平均6.5万円である)。
一方、それ以外の無認可保育施設は、国からも自治体からも、基本的には財政補助を得ない施設である。認証保育所以外の無認可保育施設であるから、本章では「無認可・無認証保育所」と呼ぶ。無認可・無認証保育所に開設要件はない。基本的な補助を得ていない無認可・無認証の保育料は相対的に高い。したがって、多くの親は、できれば認可保育施設に、無理なら認証保育所にわが子を預けようとするのである。
(3)認可保育所「等」とは
以下本書では、待機児童の定義で用いた「認可保育施設あるいは認証保育所」のことを、「認可保育所等」と呼ぶことにしよう。この用語を用いると、待機児童とは、「入所・利用資格があるにもかかわらず、認可保育所等に空席がないために入所できず、入所を待っている児童のこと」であると述べることができる。
待機児童発生の原因としての保育料規制
通常、さまざまなサービス――私立学校、塾、幼稚園など――は市場で供給され、需要と供給のバランスによってサービス料金が決まるため、価格はまちまちである。したがって、サービスへの需要が大きくなって供給不足が発生すれば、価格が上がる。保育所の場合も、便利な場所にあったり、経営が優れていて雰囲気が明るく、保護者の要望に柔軟に応えてくれたりするところへの需要は高いから、保育料も高くなると考えられる。しかし、認可保育所の価格は行政が規制しているため、各保育所の判断で保育料を上げることはできない。そのため保育所の不足が発生するのである。
つまり、待機児童とは、「行政が認可保育料を需給均衡水準より低く決めているために発生している認可保育所等に対する供給不足――すなわち超過需要――のこと」である。図0-1は、認可保育所等の収容人員に対する、需要と供給を曲線で示している。縦軸には保育料が、横軸には認可保育所等の収容人数が示されている。もし保育料に規制がなく、市場で決まるとすれば、保育料は $P^*$ である。一方、それより低い水準である $P_0$ で規制されていると需要量が供給量を $B$ 点と $A$ 点での量の差の分だけ上回る。これが待機児童数であり、超過需要である。超過需要が生じる結果、認可保育所等に入所できない児童(すなわち待機児童)は、無認可・無認証保育施設に入るか、家庭保育を受けるかになる4)。
日本の認可保育所には、自治体の選考を通じて入所できることになった児童のみに規制により安く定められた保育料でサービスを提供するという特色があり、選考から漏れた児童は高い保育料を支払うか、より質の低いサービスを許容せざるをえない。
しかも、両親ともフルタイムで働いている場合は認可保育所を配給する優先順位が高く、一方がパートタイムで働いている場合は優先順位が低い。これは、両親ともフルタイムで働く比較的高所得の家庭の児童が認可保育所に入れる一方、パートタイムの職にしか就けない比較的低所得の親の子が入れないという矛盾を生み出している。
1-2 認可保育所への入所は、行政処分による措置
そのような結果を招いてまで、認可保育所の料金規制が行われている理由は何だろうか。
1945年の敗戦後、日本は生活物資不足に襲われた。その中にあって、戦争で夫を失った母子家庭の労働状況はきわめて厳しく、幼児の世話のために兄弟が学校に通えないなどの問題も発生した。土田(2005)によれば、「戦後、まず保育所を開始したのは民間であった。焼け野原の中でとにかく子どもたちを集めて活動する青空保育も行われた。食糧事情の悪化するなか母子家庭の生活は厳しく、当時の保育所の記録には子どもたちの食料を確保するために保育者が奔走する姿が描かれている」(171ページ)。
この状況で、厚生省は当初「要保護児童」という考え方に基づいた施設を作ることを企図するとともに、それを実施するための児童保護を目的とした法律を作ろうとしていた。その土台となる文書を1946年4月からいくつも出している5)。しかしこれらはあくまで、対象を「家族を失った子ども」に限定した、児童保護という立場のものであった。これに対して、多様な団体から「保育は救貧のためだけでなく、働く婦人を支援するものとして必要だ」という要望が出された6)。
これらの要望に応えて、政府は1947年に、児童「保護」法ではなく児童「福祉」法を制定し、経済状況を入所の条件としないが、多額の公費が投入される認可保育所制度を新設した。この制度では公費が投入される認可保育所への入所は行政処分による措置とされた。すなわち、その費用は政府と自治体でまかなわれる一方、申し込んだ児童のうち誰が入所でき誰ができないかは、一定の基準に基づいて行政が決める。家庭の経済状況を入所の条件とはしなかったものの、実態としては、認可保育所の多くは、主に母親が昼間労働をすることを常態とした生活困窮者の児童のための施設であった。
ただし、児童福祉法の成立時は、保育所への入所条件が明確に規定されていなかったために、保育所の利用者が急増した。この事態に財政的に耐えられないと判断した当時の厚生省は、入所基準の厳格化によって、認可保育所の新設や入所定員の増加を防ぐ政策転換を行った7)。すなわち、1951年には児童福祉法39条に「保育に欠ける」という文言を入れ、1952年には児童福祉施設最低基準が制定され、保育所の入所基準が厳格化されることとなった。
この結果、日本の児童福祉は、(1)親が子どもの乳幼児期の養育に責任を持つ(つまり「保育に欠けない」状態)か、または(2)問題(つまり「保育に欠ける」状態)があれば行政処分という形で子どもの保護を行うかという、二分法で行われることになった8)。
この基準によって、労働市場参画を目指す女性を白と黒とに明確に二分する制度になった。このため認可保育所に入所できた児童と、無認可保育所に入所せざるをえない児童(待機児童)とが区分され、両者の親の間で、説明しようのない大きな金銭負担の格差が保育料に関して生じたのである。
元来は、①救貧対策と、②女性の労働参画の促進という2つの目的に沿った2つの制度が作られるべきであった。にもかかわらず、1つの制度でこれら2つのまったく異なる目的を達成しようとしたのである。もともとは生活困窮家庭に対する①を目的とした手厚い保育補助と安い保育料が、そのまま中高所得層に対する②の目的にも用いられたことは、財政制約との矛盾を来した。当初から、無理のある制度設計を切り抜けるための弥び縫ほう策さくに過ぎなかった「保育に欠ける」という概念も長くは持たず、さまざまな矛盾を生み出していった。このことが、待機児童問題の根本原因だといえよう。特に、フルタイムで比較的高所得を得て働く両親の子が優先的に認可保育所に入れる一方、母親がパートタイムの職にしか就けない比較的低所得の親の子が保育所に入れない、というような驚くべき現象をもたらしたのである。
1-3 社会福祉法人も認可保育所の担い手になった理由
戦後の混乱期にまず保育サービスを開始したのは民間の事業者(戦前から事業を行っていた寺や教会、社会事業家等による福祉施設等も含む)であった。政府は、このような民間の保育所に一定の公的補助を与えて保育サービスを拡大することで、増大する保育の需要に応え、効率的に福祉サービスを広げていく必要があった。
しかしそこには、憲法の壁が立ちはだかっていた。憲法89条に、「公の支配に属しない」教育や慈善の事業に対して公金を支出してはならないという規定があるからだ9)。
そこで、1951年に社会福祉事業法(現在の社会福祉法)が制定され、社会福祉法人が、「公の支配」に属する民間の団体として法的に位置づけられた10)。これにより、社会福祉団体が運営する保育所の経費への公費負担制度と固定資産税や法人税が非課税という税制面の優遇が導入されたのである(土田、2005)。同時に社会福祉法人は、保育料をはじめ各種規制を受ける。
一方、利用者は、各種規制によって、一定の質の保証がなされているという意味でのメリットも得られるが、入所が難しい、さらに入所できても夜間利用が難しいなど利用者にとって硬直的で使いづらいというデメリットも受け入れなければならない。諸規制は、事業者にサービスを改善するインセンティブを与えないだけでなく、より長期的なイノベーションも促さない。このことは、利用者にとって大きなデメリットである。
しかし、1951年に社会福祉事業法が制定されてから2000年に改正が行われるまで、実に49年間、認可保育サービスは、①自治体が直営で運営する公立保育所と、②社会福祉法人という(日本特有の)法人格を持つ民間団体に委託する私立認可保育所とが受け持つことになった。
社会福祉法人を設立するために、設立者は土地や建物を施設に寄附しなければならなかったが、それが済めば大きなキャッシュフローが入る事業体である。最近は参入規制が緩和されたとはいえ、もともとは地方で土地を持ち政治家にコネクションのある地主や寺社にとっては都合がよい制度であった。
ただし、経理に関しては外部からの監査や指導がほとんどなく、不透明である。報酬も理事長の意向で決められる。また相続ができるため、理事長は代々その一族が継承する場合が多い。配当はできないが、一族郎党にさまざまなポジションを与えたり、資材の調達先の会社の役員にしたりといった利権を生んでいる11)。
加えて、社会福祉法人やその関連団体は、保育サービス産業へのNPOや株式会社等の新規参入に否定的である12)。
【以下、第2節へ続く】
八田達夫(アジア成長研究所理事長)
Tatsuo Hatta
国際基督教大学教養学部卒業。ジョンズ・ホプキンス大学経済学部博士(Ph.D.)。
ジョンズ・ホプキンス大学教授、大阪大学教授、東京大学教授、政策研究大学院大学学長、経済同友会政策分析センター所長などを歴任。2018年より現職。国家戦略特区諮問会議議員、同会議ワーキンググループ座長も務める。
参考文献(序章)
- 大村大次郎(2017)「待機児童の裏に隠された、『巨大な保育利権』の深い闇」大村大次郎の本音で役に立つ税金情報、2017年3月21日。
- 奥平寛子(2016)「フィールド・アイ 英国から① ロンドンの保育事情」『日本労働研究雑誌』672、87-88ページ。
- 加藤静・宮本康子・山下祐依(2009)「明治から昭和初期における保育と現代の保育」『中村学園大学短期大学部「幼花」論文集』1、24-36ページ。
- 亀﨑美沙子(2011)「戦後の保育所における保育内容――保育所保育指針発行以前に着目して」『東京家政大学博物館紀要』16、27-43ページ。
- 北場勉(2005)『戦後「措置制度」の成宣と変容』法律文化社。
- 経済同友会政策分析センター(2014-2018)「政策スポットライト№1~9」。
- 厚生労働省(2015)「第1回保育士養成課程等検討会 資料4」平成27年6月5日。
- 厚生労働省(2017)「保育士試験の実施状況(平成29年度)」。
- 厚生省児童局編(1959)『児童福祉十年の歩み』財団法人日本児童問題調査会。
- 厚生労働省雇用環境・均等局(2017)「平成29年版 働く女性の実情」。
- 駒崎弘樹・八田達夫(2015)「子ども・子育て支援新制度における新しい保育の在り方」経済同友会政策分析センター「政策スポットライト№5」。
- 児童福祉法研究会編(1978)『児童福祉法成立資料集成 上巻』ドメス出版。
- 社会福祉法人陽光福祉会(2015)「保育制度の歴史」(同会ホームページ)。
- 鈴木亘(2018)『経済学者、待機児童ゼロに挑む』新潮社。
- 土田美恵子(2005)「保育所機能の歴史的変遷と子育て支援保育」『京都光華女子大学研究紀要』43、161-179ページ。
- 東京都福祉保健局(2014)「東京都保育士実態調査報告書」。
- 内閣府(2001)「バウチャーについて――その概念と諸外国の経験」『政策効果分析レポート№8』2001年7月6日。
- 内閣府(2003)「保育サービス市場の現状と課題――『保育サービス価格に関する研究会」報告書』2003年3月28日。
- 野坂勉(2011)「児童福祉施設としての保育所の最低基準――二重基準化の進行」『帯広大谷短期大学紀要開学50周年記念号』48、33-40ページ。
- 八田達夫(2016)「農業の岩盤規制に風穴をあける」21世紀政策研究所編『2025年 日本の農業ビジネス』第5章、講談社現代新書。
- 矢野雅子(2016)「戦後日本の保育所制度の変遷――児童福祉法1997年改正までの軌跡を中心に」明治大学大学院政治経済学研究科2015年度博士学位請求論文。
- 渡邊秀則・八田達夫(2017)「待機児童解消に向けた杉並区の取り組み」経済同友会政策分析センター「政策スポットライト№7」。
- Viitanen, Tarja K.(2011)“Child Care Voucher and Labour Market Behaviour: Experimental Evidence from Finland,” Applied Economics, 43(23), pp.3203-3212.
(本は縦書きです)
目次
- 序章 待機児童対策の展望……八田達夫
- 第1部 事業者による改革の提案(インタビュー、聞き手:八田達夫)
- 第1章 保育士不足問題の解決策……中村紀子
- 第2章 現場のニーズに対応した保育改革の必要性……駒崎弘樹
- 第3章 民間事業者から見た保育政策のあり方…西村孝幸
- 第2部 自治体による解決の取り組み(インタビュー、聞き手:八田達夫)
- 第4章 横浜市の保育政策「横浜方式」の核心……鯉渕信也・金高隆一
- 第5章 地域力が生み出す江戸川区の保育政策……茅原光政・浅見英男
- 第6章 待機児童ゼロを目指す東京都の試み……鈴木亘
- 第3部 保育政策への提言
- 第7章 介護保険との比較でみた保育制度改革……八代尚宏
- 第8章 今後とるべき待機児童対策……八田達夫
書誌情報など
- 八田達夫:編著
- 紙の書籍
- 定価:税込2376円(本体価格2200円)
- 発刊年月:2019年5月
- ISBN:978-4-535-55943-1
- 判型:四六判
- ページ数:256ページ
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脚注
1. | ↑ | 正確には、待機児童とは、①自治体に認可保育(認可保育所の他、小規模保育、保育ママ、認定こども園等を含む)の申し込みを行い、選考に落ちてしまった子どもの数のうち、②自治体の独自事業の無認可保育施設(東京都認証保育所など)に入ったり、③(求職中に認可保育の申し込みをしたが)もはや入園を諦めて求職活動を中止し、家で育てている子どもの数を除いたもの、と定義される(①から②と③を差し引いた数)。詳しくは、「保育所等利用待機児童数調査について」(平成29年3月31日付け雇児保発0331第6号厚生労働省雇用均等・児童家庭局保育課長通知)を参照。また、2017年定義変更の経緯等は、厚生労働省「保育所等利用待機児童数調査に関する検討のとりまとめ」を参照。 |
2. | ↑ | 後者には、小規模保育、保育ママ、認定こども園等が含まれる。詳細は本章2-2項の表0-5を参照。 |
3. | ↑ | ただし、何を自治体の独自事業と呼ぶかは、各自治体に任されているので、客観基準があるわけではない。 |
4. | ↑ | ただし超過需要の中には、「潜在的待機児童」と呼ばれるように、統計上カウントされない待機児童が存在していることにも注意しなければならない。認可保育所に入所できる可能性が低い地区では、面倒な応募手続きを避けるため、親が最初から認可保育所に申し込まない場合がある。さらに諸般の事情から、親が無認可保育所や家庭保育の方をむしろ選択する場合もある。そのような理由で親が認可保育所に申し込まずに認可保育所に入所していない児童は、待機児童とはカウントされない。 |
5. | ↑ | 矢野(2016、20-21ページ)。 |
6. | ↑ | 矢野(2016、20-22ページ)によれば、羽仁説子を会長とし、戦前期からの民間保育関係者で構成されていた民主保育連盟は、その要望書(1947年7月23日提出)の中で次のように述べている。「生産の担ひ手として国家再興のため働くべき勤労婦人の生活保証の一条件として保育問題を考へる時、生活保護的、救貧的施策によつては根本的に之を解決することは出来ないし、又誤つてゐると云はねばならない。国が婦人の立場と特質を理解し尊重するならば(中略)、婦人の解放の立場からも乳幼児の完全な養護のためにも(中略)新しい積極的な意図をもつて『母性並に乳幼児福祉法』を問題に上せることを要望する。」(引用は児童福祉法研究会(1978、747ページ:傍点強調は筆者) |
7. | ↑ | 矢野(2016、37ページ)、および厚生省児童局(1959、第3章)。 |
8. | ↑ | 矢野(2016、27ページ)。 |
9. | ↑ | 憲法89条「公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため、又は公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事業に対し、これを支出し、又はその利用に供してはならない。」 |
10. | ↑ | 憲法89条の「公の支配」に属するとは、「宗教上の用途と会計分離を公が義務づけている」と解釈するのが自然である。しかし政府は、「社会福祉法人や学校法人などの法人」という解釈を与えたのである。すなわち、天下りが可能な法人が公の支配に属するのだとしたわけである。 |
11. | ↑ | たとえば、大村(2017)参照。 |
12. | ↑ | 詳しくは、ウェブ補論2「政治的な抵抗」を参照(日本評論社ホームページ内の本書サポートページ)。 |