(第10回)リボン曲線レムニスケートの発見
数学の泉(高瀬正仁)| 2019.07.02
数学に泉あり。数学は大小無数の流れで構成されていて、今も絶え間なく流れ続けている雄大な学問ですが、どの流れにも源泉があり、しかもその源泉を作った特定の人物が存在します。共感と共鳴。数学の泉の創造者たちの心情と心を通わせることこそが、数学を理解するという不思議な体験の本質です。そこで数々の泉を歴訪して創造の現場に立ち会って、創造者の苦心を回想し、共感し、共鳴する糸口を目の当たりにすることをめざしたいと思います。
(毎月上旬更新予定)
$\def\dfrac#1#2{{\displaystyle\frac{#1}{#2}}}\def\t#1{\text{#1}}$
デカルトとフェルマにより端緒が開かれた「曲線の理論」はライプニッツとベルヌーイ兄弟(兄のヤコブと弟のヨハン)の手にわたり,壮麗な世界が開かれました.おもしろい形の曲線が相次いで発見され,さまざまな性質が究明されていきましたが,数学の世界に一段と明るい光を投げかけたのはレムニスケートと呼ばれる曲線でした.ベルヌーイ兄弟が発見したレムニスケート曲線はイタリアのトリノの数学者ファニャノを経てオイラーの手にわたり,ガウスからアーベルへと移り行きながら今日の楕円関数論の泉になりました.