法律家を目指す人々に 基礎法学は「すぐ」役に立つ:法哲学の視点から(吉良貴之)(特集:法学部をでたあと、どうする?―法学入門2019 Part.1)
◆この記事は「法学セミナー」771号(2019年4月号)に掲載されているものです。◆
特集:法学部をでたあと、どうする?―法学入門2019 Part.1
法学部で学び始めるみなさん、少し気が早いですが、法学部を卒業したあとのことをイメージしてみませんか。職業選択は、これからの経験・出会いを通じて考えていくべきテーマですが、この春に、いろいろな未来を思いうかべてみることにより、これから法学部で、学んでみたいこと、経験したいことも、溢れてくるかもしれません。
――編集部
1 はじめに─基礎法学とは?
本稿は、法学部の学部1~2年生(または法科大学院未修コースの新入生)など、これから法律学を勉強する方々のうち、将来、司法試験を受け、法律家になることを少しでも意識している方向けのものである。だが、法律学の学び方や試験対策に関わる書物にはすぐれたものが既に多くあるので、ここでは「基礎法学」という少し変わった法学科目群から考えてみたい。
新入生のみなさんは、これから自分たちが学ぶ科目にどのようなものがあるか、ご存知だろうか。法律家を意識する以上、憲法、民法、刑法など「司法試験に出る」科目の存在はご存知だろう。実際、みなさんはそうした科目を中心に学ぶことになる。ただ、それ以外の科目も法学部には多くあるのだが、具体的にどのようなものがあるのかは、高校までに法律関係の科目がほとんどないこともあり、あまり想像がつかないかもしれない。
ここで法学のカリキュラムを眺めてみてほしい。「基礎法学」という、なじみのない科目群があることに気づくだろう。これは憲法・民法・刑法といった法学の「基本科目」という意味ではなく、法哲学・法思想史、法社会学、法史学・法制史、外国法といった科目群である(表1参照)。こうした科目は、他の法律科目で行っている日本法の解釈とは雰囲気が少し異なっている。