赤ちゃんポストが問いかけたもの(田尻由貴子)(特別企画:子育て支援と虐待予防)
特別企画から(こころの科学)| 2019.06.25
心理臨床、精神医療、教育、福祉等の領域で対人援助にかかわる人、「こころ」に関心のある一般の人を読者対象とする学術教養誌「こころの科学」。毎号の特別企画では、科学的知見の単なる解説ではなく、臨床実践に基づいた具体的な記述を旨としています。そうした特別企画の一部をご紹介します。
(毎月中旬更新予定)
◆本記事は「こころの科学」206号(2019年7月号)の、奥山眞紀子=編「特別企画:子育て支援と虐待予防」に掲載されているエッセイです。◆
子ども虐待の悲しいニュースが後を絶ちません。虐待事例を早期に発見し対応することも重要ですが、そもそもそうした事態に至らないよう、子育てに難しさを抱えた家庭を地域で支える体制を構築することが喫緊の課題です。
2016年の改正児童福祉法では、家庭養育優先の原則のもと、市区町村による妊娠期からの切れ目ない支援が目指されることになりました。本特別企画では、子ども家庭支援の最前線から、虐待予防に向けた取り組みの現状と課題を浮き彫りにします。
*赤ちゃんポストの由来
お腹の赤ちゃんを守る生命尊重センターの当時の代表がドイツ視察で見た光景。緑と季節の花に彩られた通路をたどると、取手のついた小さな扉にたどり着く。事情があって育てられない新生児の命と未来を託す場所、その姿形がまるでポストのようで、設置者の温かい心遣いが感じられ胸があつくなった。その思いで、「赤ちゃんポスト」という名はつけられた。ところが、ポスト(郵便受け)=投げ入れる場所、という連想が、大きな誤解を生んだ。