(第11回)レムニスケート曲線の5等分—ガウスの遺稿より
数学の泉(高瀬正仁)| 2019.08.02
数学に泉あり。数学は大小無数の流れで構成されていて、今も絶え間なく流れ続けている雄大な学問ですが、どの流れにも源泉があり、しかもその源泉を作った特定の人物が存在します。共感と共鳴。数学の泉の創造者たちの心情と心を通わせることこそが、数学を理解するという不思議な体験の本質です。そこで数々の泉を歴訪して創造の現場に立ち会って、創造者の苦心を回想し、共感し、共鳴する糸口を目の当たりにすることをめざしたいと思います。
(毎月上旬更新予定)
$\def\dfrac#1#2{{\displaystyle\frac{#1}{#2}}}\def\t#1{\text{#1}}$
今日の楕円関数論はレムニスケート曲線$x=\sqrt{\cos 2 \theta}$ (図1)の発見とともに始まりました.
レムニスケート曲線の弧長はレムニスケート積分という名の楕円積分
\begin{align*}
\alpha=\int_0^x \frac{dx}{\sqrt{1-x^4}}
\end{align*}により表されます.この積分の逆関数
\begin{align*}
x=\varphi (\alpha)
\end{align*}は 1 価関数で,レムニスケート関数と呼ばれています.レムニスケート関数はオイラーには見られませんが,アーベルの論文「楕円関数研究」(1827$\sim$28年)においてはじめて基礎的な諸性質が繰り広げられました.アーベルに先立って,ガウスもまたレムニスケート関数に着目しています.公表にいたらなかったものの,ガウスの遺稿には多くの記述が遺されています.