(第10回)ギリシャ — 急進左派政権の終わりと続く財政緊縮

EUの今を読み解く(伊藤さゆり)| 2019.07.22
2019 年は EU にとって、イギリス離脱のほか、5 年に 1 度の欧州議会選挙、それに伴う EU の行政執行機関・欧州委員会のトップにあたる委員長の交代と体制の刷新、さらに首脳会議常任議長(通称、EU 大統領)、欧州中央銀行(ECB)総裁も交代するという大変革の年です。このコラムでは、こういったイベントを軸に EU の今を読み解いていきます。

(毎月下旬更新予定)

前回のコラムで触れたとおり、5 月に EU 加盟国で一斉に行われた欧州議会選挙では、事前に予想されていたよりも、「EU 懐疑派」の政治勢力が伸び悩んだ1)。主流派の政治に対する批判の受け皿として、親 EU の中道リベラル派や環境派が躍進したことと共に、EU 懐疑派の中でも「浮き沈み」、つまり、支持を伸ばす政党もあれば、支持を失う政党もあったからだった。支持を失った政党の代表例として挙げたギリシャの「急進左派連合」のチプラス首相(当時)は、欧州議会選挙での敗北を受けて 7 月 7 日に前倒しの総選挙に踏み切ったが、得票率は 31.5% に留まり、政権の座を最大野党で中道右派の新民主主義党(ND)に譲り渡すことになった。

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脚注   [ + ]