旧優生保護法による強制不妊手術被害と「一時金支給等に関する法律」の成立(新里宏二)(特集:旧優生保護法の下での強制不妊手術)

特集から(法学セミナー)| 2019.07.19
毎月、月刊「法学セミナー」より、特集の一部をご紹介します。

(毎月中旬更新予定)

◆この記事は「法学セミナー」775号(2019年8月号)に掲載されているものです。◆

特集:旧優生保護法の下での強制不妊手術

優生思想に基づき障害者に対する優勢手術を定めた旧優性保護法(1948年制定)が1996年に改正されるまで戦後48年間も存在し、その後も現在に至るまで強制不妊手術を受けた被害者たちが救済されてこなかった。この重大な人権侵害問題について、今年4月24日には一時金支給法が国会で成立し、5月28日には国賠訴訟の中で最初の仙台地裁判決が下された。これを機に、今後展開する裁判による司法的な解決と、一時金支給法の改正等による政治的解決を展望する端緒とするために、本特集を緊急企画した。

――編集部

1 はじめに

2019年5月28日、仙台地裁は旧優生保護法による強制不妊手術被害について国家賠償法による損害賠償を求める訴えについて、旧優生保護法は憲法13条で保障されるリプロダクティブ権を侵害し、違憲無効との判断を示しながら、「我が国ではリプロダクティブ権の議論の蓄積が少なく本件規定及び本件立法不作為につき憲法違反の問題が生ずるとの司法判断が今までなかったこと」から、損害賠償請求権を行使する立法措置は必要不可欠ではあるが、「国会にとって明白であったということは困難」として、原告等の請求を棄却した。同判決は旧優生保護法をめぐり全国7地裁、原告20名が訴えている裁判の全国初の判決であった。同法が「障害者差別である」として優生思想による条項が廃止され母体保護法に改正されてから22年、被害回復が放置されてきた。司法による救済が認められることを期待した原告等手術被害者の期待や希望を打ち砕くものであった。

他方、2018年1月30日の同事件の訴えの提訴及び追加訴訟によって、国会内での救済への動きが加速し、2019年4月24日、「旧優生保護法に基づく優生手術を受けた者に対する一時金の支給に関する法律」(以下、一時金支給法という)が全会一致で成立した。

本稿では、訴えの提起前後の動き、旧優生保護法の概要、一時金支給法の内容および問題点、判決が同法に与える影響などを述べることとする。

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