ハンセン病 元患者家族にも被害認定:熊本地裁判決 国の隔離政策が生んだ差別認める
ロー・フォーラム 裁判と争点(法学セミナー)| 2019.08.16
毎月、全国の裁判所で数多くの判決や決定が下される中から、私たちの社会に問題を提起する判決、法律学上の議論に影響を及ぼす判決など、注目の裁判を毎月ひとつずつ紹介します。
月刊「法学セミナー」より、毎月掲載。
月刊「法学セミナー」より、毎月掲載。
(毎月中旬更新予定)
◆この記事は「法学セミナー」776号(2019年9月号)に掲載されているものです。◆
ハンセン病元患者の家族561人が患者の隔離政策によって家族も深刻な差別を受けたとして、国に1人あたり550万円の損害賠償と謝罪を求めた裁判の判決で、熊本地裁は6月28日、隔離政策が差別の被害を発生させ、回復が難しい不利益を家族に与えたと認定し、原告541人に総額3億7675万円を払うよう国に命じた。元患者の家族に対して国の賠償が認められる司法判断は初めて。遠藤浩太郎裁判長(佐藤道恵裁判長代読)は「家族は憲法13条が保障する人格権、24条1項が保障する夫婦婚姻生活の自由を侵害された」と判断した。
元患者らによる裁判では、熊本地裁が2001年に隔離政策を違憲とする判決を言い渡し、当時の小泉純一郎首相が控訴せずに確定している。09年には元患者の名誉回復を国に義務付けるハンセン病問題基本法が施行されたものの、家族はその対象に含まれていなかった。今回裁判では、隔離政策が家族に損害を与えたか、民法の消滅時効が成立するかどうかが争われた。