再審開始は「著しく正義に反する」のか?(中島宏)

判例時評(法律時報)| 2019.09.30
一つの判決が、時に大きな社会的関心を呼び、議論の転機をもたらすことがあります。この「判例時評」はそうした注目すべき重要判決を取り上げ、専門家が解説をする「法律時評」の姉妹企画です。
月刊「法律時報」より掲載。

(不定期更新)

◆この記事は「法律時報」91巻11号(2019年10月号)に掲載されているものです。◆

最決令和元年6月25日(大崎事件第3次再審請求特別抗告審)裁判所ウェブサイト

1 はじめに

「最高裁、大崎事件の再審を認めず」。2019年6月26日の午後、突然届いたこの知らせに鹿児島は騒然となった。最高裁第1小法廷は、前日の25日付けで、大崎事件第3次再審請求の特別抗告について、福岡高裁宮崎支部および鹿児島地裁の各再審開始決定を破棄し、自ら再審請求を棄却する決定を出したのである。

地裁・高裁と続いた再審開始を最高裁が事実調べもせずに覆すことは想定し難い。そもそも、原決定に特別抗告の理由である憲法違反や判例違反はおよそ見出せない。高齢となった請求人の健康状態等が伝えられる中、最高裁はいつ再審開始を確定させるのか。地元・鹿児島の関心はその一点に絞られていた。夕方のローカルニュースや翌朝の地方紙は、予想外の事態を衝撃と共に批判的かつ大々的に報じた。

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