(第15回)円を描いて接線を引く—デカルトの法線法

数学の泉(高瀬正仁)| 2019.12.05
数学に泉あり。数学は大小無数の流れで構成されていて、今も絶え間なく流れ続けている雄大な学問ですが、どの流れにも源泉があり、しかもその源泉を作った特定の人物が存在します。共感と共鳴。数学の泉の創造者たちの心情と心を通わせることこそが、数学を理解するという不思議な体験の本質です。そこで数々の泉を歴訪して創造の現場に立ち会って、創造者の苦心を回想し、共感し、共鳴する糸口を目の当たりにすることをめざしたいと思います。

(毎月上旬更新予定)

$\def\dfrac#1#2{{\displaystyle\frac{#1}{#2}}}\def\t#1{\text{#1}}$

17 世紀のはじめ,曲線に法線や接線を引く方法の探究が試みられて,後年の微分法の泉が形作られました.もう少し具体的に観察すると,デカルトは代数的な曲線に限定して(接線ではなく)法線を引くための明晰判明な方法を提案し,フェルマは超越的な曲線をも対象にして,きわめて強力な,ただし必ずしも明晰判明とは言えない接線法を考案しました.法線や接線を引くためには,何よりも先に「法線もしくは接線とは何か」という問いに応じなければなりませんが,デカルトの法線法はこの問い掛けに寄せる簡明な応答に支えられています.

デカルトの著作『幾何学』から楕円の法線法を引いてみます.

デカルト『方法序説』(1637年)の表紙

このコンテンツを閲覧するにはログインが必要です。→ . 会員登録(無料)はお済みですか? 会員について