対談:グローバル化する世界における経済学者の役割とは(経済セミナー2020年2・3月号)
アメリカを筆頭に、世界中で反グローバリズムの動きが強まっている。グローバル化がもたらしたものとは、はたして何なのか? グローバル化と格差などについて発信を続けておられるスティグリッツ氏に、グローバル化の本質や、貧困・格差解消のために経済学者が果たすべき役割などについてお伺いした。
1 グローバル化する世界と格差
島田 お忙しい中、お時間をいただきありがとうございます。本日は3つのパートに分けてお話を聞かせていただきたいと思います。はじめに「グローバル化する世界と格差」について、次に「現代社会における経済学の役割」について、そして最後に「どのように経済学を研究されてきたのか?」、つまりご自身についてお伺いしたいと思います。
スティグリッツ わかりました。
島田 それでは最初に「グローバル化する世界と格差」についてのお考えをお伺いすることから始めたいと思います。先生は2002年にベストセラーとなった『世界を不幸にしたグローバリズムの正体』(徳間書店、原題:Globalization and Its Discontents)を出版され、さらに一昨年(2017年)、その続編となるGlobalization and Its Discontents Revisited:Anti-Globalization in the Era of Trump(W.W. Norton & Company, 邦題:『世界を不幸にしたグローバリズムの正体・再訪──トランプ時代の反グローバル化』未邦訳)を出版されました。
先生は現在のグローバリゼーションの状況をどのようにみておられますか? とくに、現在のグローバル化を考える上では、新技術、たとえばAI、暗号通貨、ソーシャルネットワークサービスなど、新たに開発された技術の数々についても考慮する必要があるかと思います。今日のこうした新技術やグローバル化の影響をどうお考えですか。