(第20回)捜査・公判を通じ捜査側の多くの違法行為が介在し、最高裁の判決自体も二転三転し、18年目にしてようやく無罪判決が確定した戦後最大の冤罪事件―八海事件(2)
捜査官! その行為は違法です。(木谷明)| 2020.04.15
なぜ誤った裁判はなくならないのか――。
警察官、検察官の証拠隠しや捏造、嘘によって、そしてそれを見抜かなかった裁判所によって、無実の人が処罰されてしまった数々の冤罪事件が存在します。
現役時代、30件以上の無罪判決を確定させた元刑事裁判官・木谷明氏が、実際に起こった事件から、刑事裁判の闇を炙り出します。
警察官、検察官の証拠隠しや捏造、嘘によって、そしてそれを見抜かなかった裁判所によって、無実の人が処罰されてしまった数々の冤罪事件が存在します。
現役時代、30件以上の無罪判決を確定させた元刑事裁判官・木谷明氏が、実際に起こった事件から、刑事裁判の闇を炙り出します。
(毎月中旬更新予定)
前回は、主として捜査官の違法行為を中心に指摘したが、今回は、本件の誤判原因を解明した後、本件当時と現在との捜査の比較や最高裁における審理方式の違いなどについて解説する。
8 誤判・冤罪の原因は何か
本件における誤判・冤罪の第1の原因は、現場の状況から、警察が「複数犯」と確信して、単独犯を自白している吉岡にそれを撤回させ、共犯説の自白をさせたことにある。
確かに、本件は、夫婦を惨殺して金銭を強奪した強盗殺人事件であり、死体や現場の状況(八海事件(1)2参照)は、一見すると複数犯を思わせるものであった。したがって、警察が初期捜査において複数犯を疑ったこと自体は責められない。また、当時は、第2次大戦直後の混乱期で、警察の捜査能力も高くなかった。
木谷 明(きたに・あきら 弁護士)
1937年生まれ。1963年に判事補任官。最高裁判所調査官、浦和地裁部総括判事などを経て、2000年5月に東京高裁部総括判事を最後に退官。2012年より弁護士。
著書に、『刑事裁判の心―事実認定適正化の方策』(新版、法律文化社、2004年)、『事実認定の適正化―続・刑事裁判の心』(法律文化社、2005年)、『刑事裁判のいのち』(法律文化社、2013年)、『「無罪」を見抜く―裁判官・木谷明の生き方』(岩波書店、2013年)など。
週刊モーニングで連載中の「イチケイのカラス」(画/浅見理都 取材協力・法律監修 櫻井光政(桜丘法律事務所)、片田真志(古川・片田総合法律事務所))の裁判長は木谷氏をモデルとしている。
1937年生まれ。1963年に判事補任官。最高裁判所調査官、浦和地裁部総括判事などを経て、2000年5月に東京高裁部総括判事を最後に退官。2012年より弁護士。
著書に、『刑事裁判の心―事実認定適正化の方策』(新版、法律文化社、2004年)、『事実認定の適正化―続・刑事裁判の心』(法律文化社、2005年)、『刑事裁判のいのち』(法律文化社、2013年)、『「無罪」を見抜く―裁判官・木谷明の生き方』(岩波書店、2013年)など。
週刊モーニングで連載中の「イチケイのカラス」(画/浅見理都 取材協力・法律監修 櫻井光政(桜丘法律事務所)、片田真志(古川・片田総合法律事務所))の裁判長は木谷氏をモデルとしている。