環境規制と市場競争:米国セメント産業の事例

海外論文サーベイ(経済セミナー)| 2020.12.07
 雑誌『経済セミナー』の "海外論文Survey" からの転載です.

(奇数月下旬更新予定)

Meredith Fowlie, Mar Reguant and Stephen P. Ryan (2014) “Market-Based Emissions Regulation and Industry Dynamics,” forthcoming in Journal of Political Economy

遠山祐太

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はじめに

環境問題は、今後の経済の持続的発展を考える上で避けて通れない課題の 1 つとして挙げられる。特に近年では、二酸化炭素を主因とする地球温暖化に多くの関心が集まっており、例えば米国元副大統領アル・ゴアが出演した映画『不都合な真実』(日本公開 2007 年)は多くの議論を巻き起こした。経済学において環境問題は、「外部不経済」の解消の問題、すなわち取引される市場が直接存在しないような財がもたらす負の効果を、どのようにして解消していくか、という問題に帰着する。その中には、「外部不経済」をどのように金銭評価するのか(二酸化炭素 1 トンの削減に対して人々はどれだけの支払意思があるのか)、また、どのような政策手段を用いて、外部不経済を内部化、すなわち環境コストを企業・消費者に負担させるのかなど、さまざまな論点がある。

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