ペットを連れて避難所に入れない?!(平井潤子)

特集/避難所に入れない?!―3.11に避難所について考える| 2020.03.11
特集/避難所に入れない?!―3.11に避難所について考える
日本は地震、台風、豪雨などの災害が多く、「災害大国」といわれています。
2019年の台風19号(令和元年東日本台風)では、猛烈な風と大雨による甚大な被害が出ました。しかし、SNS上では、「避難所への入所を断られた」という投稿が散見され、議論となりました。
災害が起こった場合、避難所は避難したい人を十分に受け入れることができるでしょうか。本特集では避難所のあり方について考えます。

断層に囲まれ、偏西風等の影響により台風の進路にもあたる日本列島では、毎年のように地震や豪雨による被害が生じています。「東海地震」「東南海地震」「南海地震」の3つの地震が連動して起こるといわれている南海トラフ三連動地震や、東京の都市機能がマヒしてしまうといわれている首都直下地震等が発生したときには、これまで災害救援活動の拠点となっていた都市部が被害を受けてしまいますから、人のための救援活動の開始が遅れてしまうことが予想されていますが、それ以上にペットのための救援活動は後回しになることも予想されています。また、地球温暖化の影響で海面温度が上昇し、毎年のように大型の台風が日本列島を縦断するようになってしまった近年では、記録的な豪雨が同時期に日本各所を襲い、豪雨や堤防の決壊等による被害が生じた場合、範囲が全国に亘ってしまうため、救援活動が被災地に行き届かない、という問題も懸念されています。だからこそ、まずは自分自身や家族が生き残るための「防災力」を高め、その上で、飼い主自身がペットを守るための「飼い主力」を強化することが求められるようになってきました。

1 ペットの避難対策の視点は?

2011年に発生した東日本大震災は、地震被害に加えて津波被害・原子力発電所の放射性物質漏れ被害が生じた複合災害となり、広範囲にわたり甚大な被害が生じてしまいました。この災害では、いったん避難した後にペットを救出するために自宅に戻り津波被害に遭ってしまった事例や、福島第一原発の事故では、飼い主がペットのために危険な場所に残ったり、ペットを救出するために飼い主や動物保護活動の従事者が被爆のリスクを冒して立入制限地域に侵入したりする事例が生じ、ペットの避難対策は動物愛護・動物福祉の視点だけでなく、飼い主の安全で速やかな避難にかかわることや、その後の救護活動に係る人の安全にもかかわってくることが明らかになりました。また、無人となった地域に残されたペットが放浪動物として徘徊したり、群れた犬に一時帰宅をした住民が怖い思いをしたりするほか、ペットが餌を探して壊れたドアや窓から家の中に侵入し、室内を排泄物で汚したりする事例もあり、地域の安全や衛生環境にも影響が出ることが分かりはじめました。このような経験から、災害時のペットの避難を考えていくことは、飼い主や救護を行う人の安全を守る視点、放浪している動物により地域社会の衛生状態が悪化しないようにする視点、放浪動物によって咬まれたり追いかけられたり、といった事故を防止する視点を持つことも必要だと考えられるようになったのです。

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平井潤子(ひらい・じゅんこ)
NPO法人アナイス理事長。公益社団法人東京都獣医師会事務局長。
2001年、三宅島噴火災害支援を契機に活動を開始し20年目。災害発生時には国や自治体と連携した現地救援本部が実施する被災動物救護活動に従事するほか、環境省「災害時におけるペットの救護対策ガイドライン」、「人とペットの災害対策ガイドライン」等の編集や、動物防災対策に係るアドバイザーとして広域支援訓練等に従事している。