(第3回)法セミ2020年6月号の学び方のポイント&例題

Webでも!初歩からはじめる物権法(山野目章夫)| 2020.04.07
本コーナーは、雑誌「法学セミナー」と連動した企画です。
連載に先だって、次回取り扱う内容のポイントと例題を掲載していきます。予習に、力試しに、ぜひご活用ください。そして、「法学セミナー」本誌もあわせてご覧ください。初学者の強い味方となる「初歩からはじめる物権法」、2020年4月号より連載開始です!

(毎月中旬更新予定)

すでにお知らせしているとおり、雑誌「法学セミナー」が新年度から装いを新しくしました。この機会に始める連載の一つが「初歩からはじめる物権法」です。法学セミナーは、法律を勉強する学生諸君のための学習雑誌ですが、学生でない方々も興味があれば、ぜひご覧ください。

連載の対象とする分野は、民法のなかでも、175条から後の物権法です。不動産登記制度が大きく動く時代にこの連載を進めていきます。各号の刊行に際し、その回で取り上げる話題の一端は、このウェブサイトにおいてあらかじめご紹介をします。

第3回は、つぎのようなことを話題としますから、興味がある方は、ご覧になってください。

連載第3回の「学び方のポイント」

    〇 ある土地が鈴木さんから佐藤さんへ、ついで佐藤さんから山田さんへと売られた。現在の所有権の登記名義人は、鈴木さんである。山田さんは、どのようにして山田さんを登記名義人とする所有権の登記を実現することができるか。
    〇 この取引に関わった不動産の事業者が、鈴木→山田の所有権の移転の登記をし、納める税金を少なくしたい、どうすればよいか、と筆者のもとに相談に訪れた。筆者が、「鈴木さんを売主とし、山田さんを買主とするウソの書類を作ってくれる司法書士を探したらよいでしょう」と告げたところ、その人は、「ご冗談でしょう」と憤った。そんな司法書士は、見つかったならば問題になる。たしかに冗談である。では、筆者は、まじめな話としては、どのように応えることがよいか。
    〇 ある県の公有地にはトラブル商事という株式会社が所有権の登記名義人になっている建物が存在している。それは、県に無断で建てられた住宅である。県が取壊しを求めたところ、トラブル商事は、マイホームを欲しいと望んでいた家族に最近売った、と答えた。その家族に問い合わせたならば、買ったことは事実であるが未だ引っ越してない、という。県は、いったい誰に建物の撤去を求めることがよいか、途方に暮れている。私たちは、どのようなアドバイスをしたらよいか。

連載第3回の「例題」

【例題1】
甲土地は、Aが所有し、Aを登記名義人とする所有権の登記がされていた。A・B間においてAがBに対し甲土地を売る旨の契約が締結され、ついでB・C間においてBがCに甲土地を売る旨の契約が締結された。これらの契約に基づき、Cが所有権を取得した。

 (1) Bは、Aに対し、「売買」を原因とするA→Bの所有権の移転の登記の手続を請求することができるか。

 (2) Cは、Aに対し、「売買」を原因とするA→C所有権の移転の登記の手続を請求することができるか。

【例題2】
乙建物は、Aが所有しているが、所有権の登記がされていない。乙建物は、俗に未登記の建物とよばれる。A・B間においてAがBに対し乙建物を売る旨の契約が成立した。Bは、どのようにしてBを登記名義人とする所有権の登記を実現することができるか。

【例題3】
甲土地は、Aが所有している。甲土地の上にある乙建物は、Bが、所有しており、Bを登記名義人とする所有権の登記がされていた。しかし、Bは、甲土地を使用収益する権原を有しない。BがCに乙建物を売ってCが乙建物の所有者になった場合において、乙建物の収去を請求する訴訟を提起しようとするAは、どのようふるまうことがよいか、考えてみよう。

 (1) Bが乙建物の所有権の登記名義人である場合において、Bを被告としなければならない――ホントかウソか?

 (2) Cが乙建物の引渡しを受けていない場合において、Cを被告とすることはできない――ホントかウソか?


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山野目章夫(やまのめ・あきお 早稲田大学教授)
1958年生まれ。亜細亜大学法学部専任講師、中央大学法学部助教授を経て現職。
著書に、『不動産登記法 第2版』(商事法務、2020年)、『ストーリーに学ぶ 所有者不明土地の論点』(商事法務、2018年)、『詳解 改正民法』(共著、商事法務、2018年)、『新・判例ハンドブック1、2』(日本評論社、2018年)、『物権法 第5版』(日本評論社、2012年)など。