パンデミックと「復活の日」(黒木俊秀)(特別企画:子どものこころとインターネット)
特別企画から(こころの科学)| 2020.04.17
心理臨床、精神医療、教育、福祉等の領域で対人援助にかかわる人、「こころ」に関心のある一般の人を読者対象とする学術教養誌「こころの科学」。毎号の特別企画では、科学的知見の単なる解説ではなく、臨床実践に基づいた具体的な記述を旨としています。そうした特別企画の一部をご紹介します。
(毎月中旬更新予定)
◆本記事は「こころの科学」211号(2020年5月号)の、黒木俊秀編「子どものこころとインターネット」に掲載されているエッセイです。◆
今や私たちの生活に欠かせない存在であるインターネット。文部科学省は、小中学校における携帯電話(スマホ)の持ち込みを解禁する方向で検討を重ねていますが、SNSを介した犯罪やいじめ、ネット・スマホ依存といった負の側面への対策も急務です。この特別企画では、インターネットの世界で成長してゆく子どもたちのさまざまなこころの課題を取り上げます。
現在(2020年3月)、世界はCOVID-19(新型コロナウイルス)の脅威にさらされている。当初は、中国の一部地域における未知の肺炎の流行に過ぎず、終息するのは時間の問題と思われていたが、わずか2ヵ月余りの間に状況は一変した。いまやパンデミックと呼ばれる世界的大流行の様相を呈し、各国はその感染拡大の抑止に躍起になっている。多くの国々で人々の行き交いが制限され、大勢が集まる会場や施設が封鎖されるなど、日常生活は大きな制約を強いられている。こういう時こそ、インターネットによる情報が頼りだが、日々、伝えられる状況は不安を掻き立てられるものばかりで、さまざまな「専門家」の見解や助言もあてにはできなくなっている。どうやら私たちがこれまで体験したことのない不測の事態が進行しつつあるらしい。いまだこの先の見通しが立たない懸念から株価が暴落し、人々は衛生用品や生活必需品の買い占めに奔走する。