コロナの春(磯部哲)
法律時評(法律時報)| 2020.04.27
世間を賑わす出来事、社会問題を毎月1本切り出して、法の視点から論じる時事評論。 それがこの「法律時評」です。
ぜひ法の世界のダイナミズムを感じてください。
月刊「法律時報」より、毎月掲載。
ぜひ法の世界のダイナミズムを感じてください。
月刊「法律時報」より、毎月掲載。
(毎月下旬更新予定)
◆この記事は「法律時報」92巻5号(2020年5月号)に掲載されているものです。◆
編集部から新型コロナウイルス感染症(表題及び以下「コロナ」という)に関する本稿の執筆依頼があったのは、イタリア・ロンバルディア州への渡航中止勧告が出るなど、欧州から世界中に感染が拡がろうとしていた令和2年2月末のことである。この世界的一大事をいち早く取り上げなければならないとの熱い思いに応えたかったが、時間的・紙幅的制約もあり、志村けんさん逝去の報に接した3月末の先行き不透明な情勢を前に、幾つかの事象を素材とした三題噺的エッセイにとどまってしまった。事実関係の詳細な説明や典拠参照等は最小限であることも含めご寛恕頂きたい。
1 コロナ対策の複雑さ
新興感染症対策を講ずるには、公衆保健(Public Health)の見識が不可欠であって、国内外の最新の情勢を踏まえ、当該疾病に関する最新の科学的な知見を反映させる必要がある(専門性)。中長期的なタームで取り組む展望を持ちつつ、複合的に関わる諸施策を臨機応変・迅速的確、全体として体系的・一体的に実施すること(展望性・一体性)、何より肝要なのは国民の生命・健康を守ることであり、必要な措置を確実に実行すること(実効性)、政府の説明責任が適切に果たされ、事情を正解した国民一人ひとりが冷静に行動し、政府の言動を信頼できること(信頼性)が重要であると述べても、さほど大きな反論はなかろう。