鼎談:社会で活きるナッジの手法(経済セミナー2020年6・7月号)
特集から(経済セミナー)| 2020.05.26
社会の中のさまざまな制度や仕組みに応用されつつあるナッジ。政策をはじめ、ビジネスや社会の問題を解決する方法の一つとして、近年注目が集まっている。ナッジの手法はどこまで進み、社会をどう変えていくのか。ナッジのもつ可能性について、ナッジの研究と実践に携わっておられる竹内幹氏、星野崇宏氏、山根承子氏に、オンライン上でご議論いただいた。
1 ナッジとは何か?
— まずはごあいさつからお願いします。
竹内 竹内幹です。一橋大学経済学研究科の准教授です。よろしくお願いします。
星野 星野崇宏です。慶應義塾大学経済学部で統計学と計量経済学を教えていますが、マーケティングや心理学、神経科学の研究も行っております。
山根 山根承子です。2019 年の 3 月まで大学に勤めていましたが、退職しまして、今は株式会社パパラカ研究所という会社を作って代表取締役をしております。行動経済学やデータ分析のコンサルティングなどを、民間企業や自治体とやらせていただいています。よろしくお願いします。
— ナッジとはどのようなものでしょうか。
竹内 ナッジ(nudge)は、「ひじで人を軽くつつく」という本来の意味があります。しかし、いまナッジといえば、法規制や税・補助金といった直接的なインセンティブとは別の形の働きかけを意味しています。ナッジとは、それによって、対象者が “望ましい行動” を自発的にとれるようにする一種の仕掛けのことです。