(第1回)雑誌「日本評論」の創刊(10巻10号/1935年10月号)
今回ご紹介するのは、「日本評論」10巻10号 (1935年10月号)です。
前身の「経済往来」を引き継ぐかたちで刊行されたため、こちらが創刊号となります。
表紙に「高級大衆雑誌」と銘打っており、586ページという分厚いものでした。
・価格:80銭(都税4銭)
・発行:昭和10年10月1日
1 表紙
2 目次
目を惹くのは「エチオピア報告書」。口絵にて写真でのレポートもありました。
大宅壮一「”生長の家”解剖」、室生犀星「わが随想」、武者小路実篤「病床雑記」なども掲載されています。
【「経済往来」改題飛躍号】
・今月の課題 ……馬場恒吾、飯田清三、芦田均、岡田當藏、戸坂潤、米田実、X・Y・Z
・談話会/日本文化を再評価する ……長谷川如是閑、安倍能成、宮澤俊義、今井登志喜、和辻哲郎、室伏高信
・今月の人物 ……村田孜郎、町田梓楼、垂賀勝太郞、茅盾、三浦逸雄、杉山平助
・支那の明暗相を語る夕 ……村松梢風、村田孜郎、藤枝丈夫、海口守三、新居格、陳永芳
※すべての掲載記事が目次に表記されているわけではありません。
3 口絵「動乱のエチオピア」
4 編集後記から
「出版部便り」
こちらは新刊案内やそのほかのニュースです。
山川均『鳥』、蝋山政道『議会、政党、選挙』、『貨幣価値の研究』、ニイチェ全集第6回配本
などなど。
「編集局から」
編集局の心構えと創刊の宣言ともいえるものです。以下に冒頭を引用します。
◇予告のとおり今月から日本評論と改題、発行部数倍加、これから名実ともに日本のジャーナリズムを指導する。
◇本誌の飛躍的発展、これが雑誌界話題の中心、恐怖の中心、戦慄の中心。
◇だが、恐れることも、戦慄することもない。吾々は他の如何なる雑誌とも競争しない。改造、中央公論、文藝春秋、キング、主婦之友、みなそれぞれに特色をもっている。
◇特色が存在の理由であり、その特色に応じて読者層をもつ
◇吾々は日本国民の雑誌、全国民の雑誌であることを期する。全国民に訴え、全国民を指導し、教育史、その知的伴侶たることの使命を感んずる。……
オマケ:広告をみてみよう!
他社広告
たくさん掲載されていますが、いくつかご紹介します。
「ウテナポマード」と「Refintex(リファインテックス)」。
自社広告
美濃部達吉『法の本質』は、この年発行後、まもなく発売頒布を禁止されました。
(「日評アーカイブズ」1)にて取り扱いがあります→『法の本質』)
「法律時報」2)は、現在も刊行されている法律専門雑誌です。
ここに掲載されているのは、第7巻第9号の広告。
退職積立金法案の特集の他、責任編集として銘打たれている末広厳太郎の連載もあります。
本記事に出てきた本・雑誌を参照するには
・「日本評論」10巻10号 (1935年10月号)
・法律時報第7巻第9号→TKCローライブラリーへ(「法律時報」創刊号よりPDFを提供しています)
・美濃部達吉『法の本質』
脚注
1. | ↑ | 「日評アーカイブズ」では、雑誌「日本評論」ほか、戦前の書籍を中心に、電子書籍(PDF・POD【紙の本もご注文いただけます】にて販売しています。 |
2. | ↑ | 「法律時報」とは、時事法律解説をはじめ、中堅法律家のライフワークともいえる研究論文発表の場として定評のある唯一の専門誌。創業以来、「市民のための法律学」の立場に立ち、問題提起を行ってきました。最新の法律問題、判例情報にも素早く対応しつつ、理論的に深みのある本格的な分析を行っており、特集は、学界のオピニオンリーダーともいわれます。 |