CEOの行動と企業の業績
海外論文サーベイ(経済セミナー)｜ 2020.12.08
Bandiera, O., Prat, A., Hansen, S. and Sadun, R.(2020) “CEO Behavior and Firm Performance,” Journal of Political Economy, 128 (4): 1325-1369.
西村仁憲
$\def\t#1{\text{#1}}\def\dfrac#1#2{\displaystyle\frac{#1}{#2}}$
はじめに
機械学習分野の研究成果が、経済学のミクロ実証分析の研究の今後の動向にどのような影響を与えるかという点については、関心を持っている経済学部の学部生・大学院生読者も少なくないだろう。容易に予想されることは、機械学習分野の研究成果が人間の行う経済活動に影響を与えることにより、経済学のミクロ実証分析が研究対象とする範囲に変化をもたらす可能性があることである。すでに読者もよくご存知だと思われ、かつすでに発生していることであるが、機械学習分野の研究成果を応用して作成されたアルゴリズムの行う作業が、現在人間が行っている作業を一部代替し始めている。人間の行う作業を代行する能力があらゆる領域において非常に高まれば、人間の労働が社会から消滅する可能性があり、仮に人間の労働が消滅した場合には人間の労働に関連するトピックについて社会科学の研究を行う意義を見出すことは難しくなるだろう。その結果、人間の労働を研究対象とする社会科学の研究も消滅に向かう可能性がある。その場合、人間の行う労働がミクロ実証分析の研究対象から消滅する。