憲法・非常事態・コロナ(林知更)

法律時評(法律時報)| 2020.12.01
世間を賑わす出来事、社会問題を毎月1本切り出して、法の視点から論じる時事評論。 それがこの「法律時評」です。
ぜひ法の世界のダイナミズムを感じてください。
月刊「法律時報」より、毎月掲載。

(毎月下旬更新予定)

◆この記事は「法律時報」92巻13号(2020年12月号)に掲載されているものです。◆

 危機が突き付けるもの

2020年12月号(3,100円+税)

2020年は法学にとっても、我々が暗黙に前提としていた自明性が思いもよらない形で揺るがされた年として、長く記憶されることになろう。ここで問われているのは、いわば我々の思考ないしは認知の枠組みそれ自体であるようにも思える。すなわち一方では、戦争や内乱・テロ、大規模災害といった従来想定されてきた類型とは大きく異なる形で、「非常事態」ないし「緊急事態」の到来が問題とされた。他方では、コロナ下での我々の生活を「新しい日常」へと適応させるべきことが有力に説かれている。しかし、我々がこれまで目撃してきた事態のうち、何が「日常」で何が「非常事態」なのか。我々が当たり前のように用いるこうした区別自体にそもそもどのような意味があるのか。こうした問いは、非常事態条項といった論点を典型に、これらのカテゴリーを思考の構成要素としてきた憲法学にとっても、無縁ではありえない。

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