(第5回)ものさしを増やす

みんなのストレス波乗り術(竹田伸也)| 2021.01.21
ストレスをなくそうとするのではなく、しなやかに対処する。海に浮かぶ発泡スチロールの船のように、大波にあらがうのではなく、波に乗って飄々とやりすごす。“波乗り”こそ、ストレスとつきあう一番の方法です。“みんな”のこころを楽にするストレスの波乗り術を、臨床心理学を用いてやさしくお伝えします。

(毎月下旬更新予定)

去年の目標、覚えてますか?

「一年の計は元旦にあり」

なんて言葉が、古くから言われます。この言葉の由来は、明朝時代の中国にさかのぼるそうですね。馮慶京(ひょうおうきょう)という人が著した『月令広義』のなかに、次のような一節があります。

「一年之計在春」

ここでの春は正月を表しますので、「一年の計画は元旦に立てなさい」というこの言葉に結びつくのだそうです。一方、この言葉の由来は、毛利元就の言辞だという説もあるようですね。いずれにせよ、人は昔から正月を迎えると、この言葉に表されるような気持ちになったのでしょう。

あなたも、年が明けて朝起きたときに、この「一年の計は元旦にあり」って言葉を思い出しませんか。そして、「今年はどんな年にしようか」と張り切って何かを考える。そんなことを、毎年しているような気がしませんか?

「毎年しているような気がしませんか? って、なんか心許ない言い方やなぁ。そんなもん、一年の計画を新年初っぱなの朝に立てたら、それにしたがって一年過ごすんやから、ハッキリ覚えてるやろ!」

こんなふうに、するどい突っ込みを入れることができる人って、どのくらいいます? 僕はそんなこと、とても言えません。だって、「今年はこんなふうに過ごすぞ!」って勢い込んで考えた“なんちゃって計画”なんて、長続きしたためしがないからです。つい、三日坊主に終わって、今さえよければって暮らしに流されちゃうんですよね。

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竹田伸也(たけだ・しんや)
鳥取大学大学院医学系研究科臨床心理学専攻准教授。専門は、臨床心理学、認知行動療法。「生きづらさを抱えた人が生まれてきてよかったと思える社会の実現」をコンパスとして、その方向にそって自分にできることを進めている。最近は、自分のもつ弱さをかわいく思える技の開発に励んでいる。著書に、『マイナス思考と上手につきあう認知療法トレーニング・ブック』(遠見書房)、『対人援助職に効くストレスマネジメント』(中央法規出版)など。