(第31回)強盗殺人事件につき、多くの違法捜査と違法な公判活動を重ねた結果、無実の若者2人に無期懲役刑を確定させた─布川事件(1)

捜査官! その行為は違法です。(木谷明)| 2021.02.16
なぜ誤った裁判はなくならないのか――。
警察官、検察官の証拠隠しや捏造、嘘によって、そしてそれを見抜かなかった裁判所によって、無実の人が処罰されてしまった数々の冤罪事件が存在します。
現役時代、30件以上の無罪判決を確定させた元刑事裁判官・木谷明氏が、実際に起こった事件から、刑事裁判の闇を炙り出します。

(毎月中旬更新予定)

本件は、強盗殺人罪の容疑を受けた若者2人(桜井昌司さん20歳と杉山卓男さん21歳、いずれも「当時」)に対する捜査・公判において、警察・検察官が種々違法な活動をした事件として超有名である。

再審で無罪判決が確定した後、桜井さんは、国家賠償請求訴訟を提起し、第1審で一部勝訴の判決を得ている(現在、控訴審係属中。なお、杉山さんは訴訟を諦めしばらく平穏な市民生活を楽しんだが、2015年に亡くなった)。事案がやや複雑で論点も多い上、弁護人・裁判所の対応についても論じる必要があるので、今回も2回に分けて紹介する。

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木谷 明(きたに・あきら 弁護士)
1937年生まれ。1963年に判事補任官。最高裁判所調査官、浦和地裁部総括判事などを経て、2000年5月に東京高裁部総括判事を最後に退官。2012年より弁護士。
著書に、『刑事裁判の心―事実認定適正化の方策』(新版、法律文化社、2004年)、『事実認定の適正化―続・刑事裁判の心』(法律文化社、2005年)、『刑事裁判のいのち』(法律文化社、2013年)、『「無罪」を見抜く―裁判官・木谷明の生き方』(岩波書店、2013年)など。
週刊モーニングで連載された「イチケイのカラス」(画/浅見理都 取材協力・法律監修 櫻井光政(桜丘法律事務所)、片田真志(古川・片田総合法律事務所))の裁判長は木谷氏をモデルとしている。