モバイル端末の位置情報を利用したマーケティング戦略のフィールド実験

海外論文サーベイ(経済セミナー)| 2021.01.29
 雑誌『経済セミナー』の "海外論文Survey" からの転載です.

(奇数月下旬更新予定)

Ghose, A., Li, B. and Liu, S.(2019) “Mobile Targeting Using Customer Trajectory Patterns,” Management Science, 65 (11): 5027-5049.

松井 暉

$\def\t#1{\text{#1}}\def\dfrac#1#2{\displaystyle\frac{#1}{#2}}$

はじめに

私たちに付いているセンサーは世界と常時接続し、リアルタイムに私たちの位置情報を発信している。スマートフォンに代表されるモバイル端末という “センサー” から取得された粒度の細かいデータによって、さまざまな人の移動パターンを詳細に研究できるようになってきた。人々の位置情報をもとにした行動データは「オフライン軌跡(offline trajectory)」1)と呼ばれ、オンライン上の行動データ2)と対比されることが多い。オフライン軌跡は、観察研究だけではなく、実験研究者にも圧倒的な恩恵をもたらす。研究対象はすでに高度な通信機能と位置情報発信能力を有するモバイル端末を持っているので、ランダム割当、介入、その効果測定がデジタル上で完結するからである。

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脚注   [ + ]

1. 適当な訳語がみつからなかったので、本記事では直訳をあてることにする。
2. “online trajectory” と呼ばれることが多い。