対談:多様性に目を向けたマクロ経済学の可能性(経済セミナー2021年2・3号)
特集から(経済セミナー)| 2021.01.27
マクロ経済学に、ミクロデータに着目して家計や企業などの多様性 (異質性) をモデルに組み入れる動きがある。このアプローチは現実をどう捉え、どんな経済学的・政策的な示唆をもたらしてくれるのか。従来の代表的個人モデルと大きく異なる点はどこにあるのか。この分野で活躍する二人が、その醍醐味や現実へのインプリケーションを議論する。
1 はじめに
— 本日は、お二人が取り組まれている異質な個人や企業に着目した研究について、近年までのマクロ経済学を振り返りつつ、現実への示唆も交えてご紹介いただきます。
向山 ジョージタウン大学の向山です。アメリカのロチェスター大学で Ph.D.を取得し、最初はカナダのコンコルディア大学に就職しました。その後、アメリカのバージニア大学へ移り、アメリカの中央銀行である連邦準備制度理事会 (FRB) で途中 1 年間エコノミストとして働き、バージニア大学に戻った後でジョージタウン大学に移って現在に至ります。
専門はマクロ経済学で、景気循環や経済成長の文脈で、労働者の失業や転職、企業の参入・成長・退出といった現象を研究しています。労働市場を分析することが多いのですが、異質な経済主体 (heterogeneous agent)、つまり家計や企業などの多様性を意識した研究をしています。