(第17回)相関と因果 — 相関があるから因果関係があるとは限らない
現実を「統計的に理解する」ための初歩の初歩(麻生一枝)| 2021.03.11
私達が生きる現実社会の多くの問題の理解には,種々の数値の測定や観察とそれを「統計的に処理する」作業が欠かせません.毎日のニュースでもありとあらゆる機会に「数値」が出てきますが,その意味をきちんと考えたり信憑性を疑うことは、必ずしもなされていないようです.この連載では,誰でも知っておいてほしい統計についての基本的な考え方や, 統計にまつわる誤解や陥りやすい罠を紹介していきたいと思います.
(毎月中旬更新予定)
$\def\t#1{\text{#1}}\def\dfrac#1#2{\displaystyle\frac{#1}{#2}}$
アメリカの大学の統計学で授業が相関の単元に入ると、呪文のように叩き込まれる言葉がある。
Correlation does not necessarily means causation.
「相関は、因果関係を必ずしも意味しない。相関が、因果関係を意味するとは限らない。」が、それだ。
2 つの変数の間に相関があっても、つまり、2 つの変数の間に、
片方 (変数 $x$) が増加するにつれて、もう片方 (変数 $y$) も増加する (正の相関)
あるいは、
片方 (変数 $x$) が増加するにつれて、もう片方 (変数 $y$) が減少する (負の相関)
という関係があっても、
「$x$ が原因で、$y$ が起こっている」「$x$ が、$y$ を引き起こしている」(因果関係) とは必ずしも言えない、
という意味だ。
麻生一枝 成蹊大学非常勤講師.お茶の水女子大学理学部数学科卒業,オレゴン州立大学動物学科卒業,プエルトリコ大学海洋学科修士,ハワイ大学動物学Ph.D. 専門は動物行動生態学.「統計や実験デザインの理解は健全な科学研究に必須である」という信念のもと,これらの教育の普及に熱意を持って取り組む.著訳書に『科学でわかる男と女になるしくみ』 (SBクリエイティブ),『実データで学ぶ,使うための統計入門 ---データの取りかたと見かた』(共訳,日本評論社), 『生命科学の実験デザイン』(共訳,名古屋大学出版会),『科学者をまどわす魔法の数字,インパクト・ファクターの正体---誤用の悪影響と賢い使い方を考える』(日本評論社)など.