(第7回)失敗に潜む普遍性に注目する

みんなのストレス波乗り術(竹田伸也)| 2021.03.22
ストレスをなくそうとするのではなく、しなやかに対処する。海に浮かぶ発泡スチロールの船のように、大波にあらがうのではなく、波に乗って飄々とやりすごす。“波乗り”こそ、ストレスとつきあう一番の方法です。“みんな”のこころを楽にするストレスの波乗り術を、臨床心理学を用いてやさしくお伝えします。

(毎月下旬更新予定)

あるミッション

ここに、あるミッションがあります。まだ誰もやったことのないミッションですが、あなたのいるコミュニティが、さらに暮らしやすくなるために大切なミッションです。このミッションにチャレンジする人を、現在募集中です。

成功したら、みんなの賞賛が得られるかもしれません。でも、失敗すると、人々から激しいバッシングを必ず受けます。「できもしないのに、なぜ応募したんだ!」から始まり、挙句の果てには人格攻撃までがネットで繰り広げられること間違いなし。チャレンジに失敗した人は、これでもかというほど叩かれることになります。

こんなチャレンジ、あなたはしてみたいと思いますか? 僕はしたくありません。きっと、このミッションへの応募者は少ないだろうと予想されます。でも、ミッションの目的が「コミュニティがさらに暮らしやすくなるため」だからこそ、なんとかしなければという気持ちから、挑戦する人もいると思うのです。多くの人がそうした挑戦者に続くことができたら、世の中はもっと暮らしやすくなるのでしょうね。せめて、そうした挑戦者の足を引っ張るようなことをあれこれ言わない社会だと、まだいいのかもしれません。

僕たちは、失敗に対して周りからこっぴどく叩かれることが予想されると、勇気を出して何かにチャレンジしてみようという気持ちが削がれてしまいます。

さて、周りを見回してみてください。僕たちが住むこの国は、失敗に対して寛容な社会だといえるでしょうか。

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竹田伸也(たけだ・しんや)
鳥取大学大学院医学系研究科臨床心理学専攻准教授。専門は、臨床心理学、認知行動療法。「生きづらさを抱えた人が生まれてきてよかったと思える社会の実現」をコンパスとして、その方向にそって自分にできることを進めている。最近は、自分のもつ弱さをかわいく思える技の開発に励んでいる。著書に、『マイナス思考と上手につきあう認知療法トレーニング・ブック』(遠見書房)、『対人援助職に効くストレスマネジメント』(中央法規出版)など。