(第9回)弱さを勘定にいれる

みんなのストレス波乗り術(竹田伸也)| 2021.05.20
ストレスをなくそうとするのではなく、しなやかに対処する。海に浮かぶ発泡スチロールの船のように、大波にあらがうのではなく、波に乗って飄々とやりすごす。“波乗り”こそ、ストレスとつきあう一番の方法です。“みんな”のこころを楽にするストレスの波乗り術を、臨床心理学を用いてやさしくお伝えします。

(毎月下旬更新予定)

勘定次第

先月(2021年4月)から、全国のお店で商品の総額表示が義務化されました。これまでは、お店によっては税抜価格で表示されていた商品が、消費税額を含めた価格表示をしなければならなくなったのです。商品自体の価格は変わらないけれど、消費税を勘定にいれた価格を表示されると、なんだか値上げしたような印象をもってしまいますね。

僕は週末、1週間頑張った自分へのご褒美にお酒を飲むのですが、総額表示になってからというもの、「え、このビールこんなに高かったっけ? だったら、今回はこっちの発泡酒にしよう」のように、安いほうを買ったりすることが増えました。こんなふうに、消費税分を勘定にいれた表示を見ると、余計なものは買わないようにしようとか、同じものだったら安いこっちのメーカーを選ぼうといったように、消費行動に影響することもあります。

「何を勘定にいれるか」によって、僕たちが受け取る印象や行動は違ってくる。だとしたら、自分自身やコミュニティの生きづらさを少しは和らげてくれるような、「勘定にいれるとよいもの」はないものでしょうか。今回は、そんな話をしてみたいと思います。

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竹田伸也(たけだ・しんや)
鳥取大学大学院医学系研究科臨床心理学専攻教授。専門は、臨床心理学、認知行動療法。「生きづらさを抱えた人が生まれてきてよかったと思える社会の実現」をコンパスとして、その方向にそって自分にできることを進めている。最近は、自分のもつ弱さをかわいく思える技の開発に励んでいる。著書に、『マイナス思考と上手につきあう認知療法トレーニング・ブック』(遠見書房)、『対人援助職に効くストレスマネジメント』(中央法規出版)など。