序文(特別企画:高齢者の暮らし・こころ・居場所)(編:大石智)
特別企画から(こころの科学)| 2021.06.17
心理臨床、精神医療、教育、福祉等の領域で対人援助にかかわる人、「こころ」に関心のある一般の人を読者対象とする学術教養誌「こころの科学」。毎号の特別企画では、科学的知見の単なる解説ではなく、臨床実践に基づいた具体的な記述を旨としています。そうした特別企画の一部をご紹介します。
(毎月中旬更新予定)
◆本記事は「こころの科学」218号(2021年7月号)の、大石智編「特別企画:高齢者の暮らし・こころ・居場所」に掲載されている序文です。◆
大学で、高齢の人に関して講義をする機会をいただいている。学生の頃、講義より気になることばかりだった私は、まともに教科書を通読した記憶がない。そのせいか、講義の準備のために教科書を読む時は妙に新鮮な気持ちになる。新鮮な気持ちで教科書を読み、資料に教科書の言葉を引用しようとすると、認知症のある人が読んだら傷つきそうな言葉ばかりということに気づく。気づいてばかりだから資料作りは滞る。