(第39回)連載を振り返って(1)
捜査官! その行為は違法です。(木谷明)| 2021.10.08
なぜ誤った裁判はなくならないのか――。
警察官、検察官の証拠隠しや捏造、嘘によって、そしてそれを見抜かなかった裁判所によって、無実の人が処罰されてしまった数々の冤罪事件が存在します。
現役時代、30件以上の無罪判決を確定させた元刑事裁判官・木谷明氏が、実際に起こった事件から、刑事裁判の闇を炙り出します。
警察官、検察官の証拠隠しや捏造、嘘によって、そしてそれを見抜かなかった裁判所によって、無実の人が処罰されてしまった数々の冤罪事件が存在します。
現役時代、30件以上の無罪判決を確定させた元刑事裁判官・木谷明氏が、実際に起こった事件から、刑事裁判の闇を炙り出します。
(毎月中旬更新予定)
1 違法捜査と冤罪の関係
40回近く続けてきたこの連載(事件数としては28件)も、終わりが近づいた。まだまだ取り上げなければならない事件はあるが(特に、後に述べる第一期には、無罪判決に至ったものだけでも、菅生事件、辰野事件、青梅事件、芦別事件等、権力の謀略をうかがわせる事件が相当数ある)、新刑事訴訟法施行後の代表的な冤罪事件(無罪確定事件)を概ね拾い上げることができたと考えるからである。
そこで、これまでの連載を振り返って、「違法捜査と冤罪」の関係を総括してみようと思う。
これまでの連載から明らかなとおり、冤罪事件では例外なく違法捜査が行われている。それは、これらの事件においては、捜査が難航し、通常の「合法的な」捜査では、容易に犯人を検挙することができなかったことを示している。そうすると、違法捜査が行われた事実は、「そのような非常手段を執らない限り犯人の検挙・起訴ができない」と捜査機関が自覚していたことを示すと言えそうだ。
要するに、重大な違法捜査の存在は、それ自体として「冤罪の重要な徴表」であるということができると思われる。
それでは、従前の冤罪事件では、どのような違法捜査が行われてきたのか。その点は次回に検討するが、まず、前提として、これまで順不同で扱ってきた事件を、事件発生順に並べ替え、これを三期に分類してみることとする。
木谷 明(きたに・あきら 弁護士)
1937年生まれ。1963年に判事補任官。最高裁判所調査官、浦和地裁部総括判事などを経て、2000年5月に東京高裁部総括判事を最後に退官。2012年より弁護士。
著書に、『刑事裁判の心―事実認定適正化の方策』(新版、法律文化社、2004年)、『事実認定の適正化―続・刑事裁判の心』(法律文化社、2005年)、『刑事裁判のいのち』(法律文化社、2013年)、『「無罪」を見抜く―裁判官・木谷明の生き方』(岩波書店、2013年)など。
週刊モーニングで連載中の「イチケイのカラス」(画/浅見理都 取材協力・法律監修 櫻井光政(桜丘法律事務所)、片田真志(古川・片田総合法律事務所))の裁判長は木谷氏をモデルとしている。
1937年生まれ。1963年に判事補任官。最高裁判所調査官、浦和地裁部総括判事などを経て、2000年5月に東京高裁部総括判事を最後に退官。2012年より弁護士。
著書に、『刑事裁判の心―事実認定適正化の方策』(新版、法律文化社、2004年)、『事実認定の適正化―続・刑事裁判の心』(法律文化社、2005年)、『刑事裁判のいのち』(法律文化社、2013年)、『「無罪」を見抜く―裁判官・木谷明の生き方』(岩波書店、2013年)など。
週刊モーニングで連載中の「イチケイのカラス」(画/浅見理都 取材協力・法律監修 櫻井光政(桜丘法律事務所)、片田真志(古川・片田総合法律事務所))の裁判長は木谷氏をモデルとしている。