(第17回)答弁書の作法(3)

民事弁護スキルアップ講座(中村真)| 2021.10.15
時代はいまや平成から令和に変わりました。価値観や社会規範の多様化とともに法律家の活躍の場も益々広がりを見せています。その一方で、法律家に求められる役割や業務の外縁が曖昧になってきている気がしてなりません。そんな時代だからこそ、改めて法律家の本来の立ち位置に目を向け、民事弁護活動のスキルアップを図りたい。本コラムは、バランス感覚を研ぎ澄ませながら、民事弁護業務のさまざまなトピックについて肩の力を抜いて書き連ねる新時代の企画です。

(毎月中旬更新予定)

秋の足音が聞こえるようになり、緊急事態宣言も解除されましたね。秋口から年末までは毎年あっという間に感じます。

1 答弁書についての話はさらに続く

今回で3回目となる答弁書のお話ですが、前回は、請求の趣旨に対する答弁について取り上げました。

請求の趣旨に対する答弁は、本来、請求の棄却を求める、請求を認める(認諾)等が考えられますが、通例はほぼ請求棄却を求めることになります。これは訴状の請求の趣旨について形式的な面からチェックするという視点が大きいわけですが、今回から請求の原因に対する認否について取り上げたいと思います。

なお、民事訴訟では「請求の趣旨に対する答弁」、「請求(の)原因に対する認否」と、その対象によって「答弁」と「認否」という語を明確に使い分けています(規則80条1項参照)。こういった用語の使い分けは、細かいようですが、「被告」と「被告人」の使い分けのように、代理人としての基本的な知識・理解の有無を窺わせる点です。

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中村真(なかむら・まこと)
1977年兵庫県生まれ。2000年神戸大学法学部法律学科卒業。2001年司法試験合格(第56期)。2003年10月弁護士登録。以後、交通損害賠償案件、倒産処理案件その他一般民事事件等を中心に取り扱う傍ら、2018年、中小企業診断士登録。2021(令和3)年9月、母校の大学院にて博士(法学)の学位を取得(研究テーマ「所得税確定方式の近代及び現代的意義についての一考察-我が国及び豪・英の申告納税制度導入経緯を中心として-」)。現在、弁護士業務のほか、神戸大学大学院法学研究科にて教授(法曹実務)として教壇に立つ身である。

著者コメント 前回の請求の趣旨に対する答弁に続いて、今回は請求原因に対する認否を取り上げました。訴状の作法の回で述べたところと一部重複する部分もありますが、重要な点であることから改めて詳しく検討してみました。
さて、次回は答弁書での被告の主張の展開方法について取り上げます。