(第2回)注意欠如・多動症(ADHD)の薬物療法以外の治療/新しい治療選択肢について

子どもの心のお薬Q&A(岡田俊)| 2021.11.04
子どもが病院や診療所で心の薬による治療を薦められることは決して稀ではありません。子どもだって心が病むときも、その回復に支えが必要なこともあるのです。安易な薬物療法は望ましくありませんが、一律に避けてしまうというのも子どものためになりません。子どもの精神科薬物療法について、できるだけわかりやすくQ&Aでお伝えします。

(毎月上旬更新予定)

Q 注意欠如・多動症(ADHD)に薬物療法以外の治療はあるのでしょうか?

そもそも注意欠如・多動症(Attention Deficit/Hyperactivity Disorder:ADHD)と診断をされても、まずは環境調整や薬物療法の以外の取り組み(心理社会的治療と言います)を行い、それらによっても十分な改善がみられない場合に薬物療法を開始する、というのが大原則です。

しかし、診断されてすぐに薬物療法を提案されたように思う、という親御さんも多いはずです。それにはいくつかの理由があります。

環境調整や心理社会的な取り組みは、医療機関だけで行うものではありません。すでに学校で担任、養護教諭、通級指導教諭、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーなどの力で十分な工夫が行われていることもあります。相談機関や療育機関で臨床心理士や公認心理師、言語聴覚士、作業療法士などの専門家に十分なサポートをしていただいている場合もあります。

もう一つは、症状やそれに伴う困難が強く、速やかに改善を図らなければ、心理社会的な取り組みも効果が得られにくいというような場合です。この場合、心理社会的治療が軌道に乗れば、薬物療法を減量・中止できるかを検討する必要があります。ただし、このような判断がなされた場合には、心理社会的治療と薬物療法を組み合わせた包括的な治療が必要になることがほとんどです。

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岡田 俊(おかだ・たかし)
精神科・児童精神科医師。1997年京都大学医学部卒業。同附属病院精神科神経科、デイケア診療部などの勤務を経て、2011年より名古屋大学医学部附属病院親と子どもの心療科、2020年より国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所に勤務。