『結び目のはなし(新装版)』(著:村上斉)
まえがき
この本は,高校生くらいの人を対象に,「結び目」とはどういうものか,また数学的にどう取り扱うかを説明した(つもりの)本です.理解しやすくしようといろいろ努力してみましたが,まだ分かりにくいところとか,逆に,分かっている人にとってはまわりくどいところもあるかと思います.
僕としては,この本で「結び目」を研究することの面白さを分かってもらえればいいなと思っています.そして,もしこの本を読んで,「面白そうだから,結び目の研究がしてみたい」なんて考える人が現れたりしたら,これに勝る喜びはありません.
この場を借りて,僕が仕事にのめり込みすぎるのを未然に防いでくれた娘,新しいアイデアが出るたびに,つまらない顔をしつつも聞いてくれた妻,原稿を丁寧に読んで多くの助言をしてくれた正岡弘照君,そして,この本を書くきっかけを与えていただき,また,原稿執筆中にもいろいろとお世話をしてくださった遊星社の西原昌幸氏に感謝します.
1990年4月
村上 斉
新装版のまえがき
本書の初版が発売されて30年以上たちます. 長いですね.高校のときにこの本を読んでくれた人が,今は立派な数学者になっています.僕も60歳を超えました.
発売元である遊星社の西原昌幸さんの引退に伴い廃版になるということだったのですが,日本評論社のご厚意により再発売されることになりました.
遊星社版に加えて,新たに第9章を付け加えました.それから,2015年に新版を発行しましたが,その遊星社の新版では割愛した「プロローグ」と「エピローグ」を復活させました.かなり古い話なので分からないところも多いでしょうから,初版執筆当時を思い出しながら注釈を書き加えてみました.
指導要領の改訂に伴い,第3章と第4章の内容はほとんど高校で習うようになりました.自然数 $p$ を法とする合同式が理解できている人なら,この2つの章を飛ばしても構いません.(わりと工夫して書いたので時間があったら読んでくれるとうれしいな.) またページに少し行列が現れますが,わからなくても影響はないと思います.
西原昌幸さん,日本評論社の筧裕子さん,それから家族に感謝します.
2021年11月
村上 斉
目次
- 第1章 結び目とは
- 1 ひも結びから結び目へ
- 2 結び目を定義しよう
- 3 結び目を描いてみよう
- 4 結び目は一体いくつあるのでしょう
- 第2章 同値変形と不変量
- 1 「同値」とは?
- 2 方程式の同値変形とその不変量を考えよう
- 3 平面図形の同値変形とその不変量を考えよう
- 第3章 合同式
- 1 合同式ってなんでしょう?
- 2 10進法から10を法とした合同式ヘ
- 3 7進法から7を法とした合同式ヘ(フュープラニエタン星にて)
- 4 16進法と65536を法とした合同式(コンピュータ一好きの人へ)
- 第4章 合同式を使った方程式
- 1 2を法とした方程式で遊ぼう
- 2 3を法とした方程式で遊ぼう
- 3 4を法とした方程式で遊ぼう
- 4 5を法とした方程式で遊ぼう
- 第5章 ライデマイスター移動
- 1 平面上の図形の同値変形とは
- 2 空間内の同値変形を平面上で表そう(ライデマイスター移動)
- 第6章 結び目の不変量
- 1 不変量を定義しよう
- 2 不変量であることの証明(ちょっと難しいぞ!)
- 第7章 不変量の計算
- 1 ひとえ結び目
- 2 8の字結び目
- 3 結び目の不変量の性質を考えてみよう
- 第8章 結び目に向きをつけよう
- 1 複素数の合同
- 2 ガウス整数を使った不変量
- 3 不変量であることの証明
- 4 計算例
- 第9章 彩色数
- 1 彩色数
- 2 彩色数は不変量
- 3 射影図の定めるグラフ
- 4 彩色数=階数
- エピローグ
書誌情報など
- 『結び目のはなし(新装版)』
- 著:村上斉
- 紙の書籍
-
予価:税込2530円(本体価格2300円)
- 発刊年月:2022年1月
- ISBN:978-4-535-78947-0
- 判型:A5判
- ページ数:208ページ
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関連書籍
- トポロジーへの誘い[新装版]—多様体と次元をめぐって(松本幸夫 著)
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