『食卓から地球を変える—あなたと未来をつなぐフードシステム』(著:ジェシカ・ファンゾ,訳:國井修・手島祐子)
- #一冊散策
訳者まえがき
「すばらしい本があるので、日本語に訳して出版したいんです。12 月の東京栄養サミットの前に。是非協力してください」。
私がメンターをしている若手専門家のひとり手島祐子さんから、2021 年 7 月にメールでこのような相談が届きました。これまで進路を含め、さまざまな相談に応じてきたのですが、この依頼に応えるのはちょっと無理がある……。
彼女は管理栄養士で、学生の頃からグローバルヘルスに興味を持ち、私の日本でのセミナーや講演会に足を運んでくれていました。大学を卒業して就職した後、JICA 青年海外協力隊としてインドネシアで栄養改善活動に取り組み、東京大学大学院 (国際地域保健学教室) で修士号を取得し、現在は開発コンサルタントとして活躍するなど、キャリアを磨いてきました。高い志とみなぎる情熱を持った行動派の若者です。
ただし、翻訳・出版の経験はなく、まだ出版社も決まっていないのに、5 カ月以内に出版したいというのは、無茶な相談です。最近は出版業界も経営が困難で、大使や国会議員を務めた人が原稿を持っていっても、出版社が首を縦に振らず、自費出版せざるを得ないこともあるそうです。
出版社が決まったとしても、彼女と私で共訳し、さらに私がすべてをチェックして、編集・校正を終えて印刷するのに、どんなに急いでも最低 6 カ月はかかります。しかも、私は日頃、スイスの国際機関のグローバルファンドで世界の三大感染症 (エイズ、結核、マラリア) 対策をしながら、世界 100 カ国以上での新型コロナウイルス感染症対策にも取り組んでいるので、土日でも時間を見つけるのがむずかしい。
それでも最終的に、出版時期を 3〜4 カ月遅らせることで、この本の共訳・出版に協力したのは、やけどしそうなほど熱い手島さんのパッションと、この本の魅力です。
この本の著者ジェシカ・ファンゾ氏は、「著者まえがき」にもあるとおり、はじめは栄養学の実験室に閉じこもり、その後、より世界のためになる仕事をしたいと、アフリカ、アジアで調査研究をし、コロンビア大学地球研究所、国際生物多様性センター、国連世界食糧計画 (WFP)、国連食糧農業機関 (FAO) などを歴任した方です。現在はジョンズ・ホプキンス公衆衛生大学院で国際食料・農業政策および倫理学教授として活躍しています。実験室から人へ、人から地域、地域から地球へ、彼女はその研究・実践活動を広げる中で、人の健康をもたらす栄養、そして食料は、農場などでの生産から、配送、加工、包装、店頭での販売、そして食卓へと続く一連の過程である「フードシステム」によって支えられ、それは「人間の健康」だけでなく、植物、昆虫、動物を含む地球環境、そして「地球の健康」に深く甚大な影響を与えていることを認識しました。
近年、栄養や食事に関する本はたくさん出版されています。しかし、ときには、肉は絶対に食べるな、牛乳は飲むな、これだけ食べていればいい、など極端な食事法を推奨し、データやエビデンスよりも、著者の信念や信仰に基づいて書かれたような本も見受けられます。新型コロナウイルス感染症 (とくにワクチン) に関する本もそうでしたが、ファクトやエビデンスに反した本のほうが売れることも多いようです。
一方、この本は、彼女のこれまでの研究・実践活動、さらに世界の著名な研究者や実務者が積み上げたデータや事例、それらをまとめた国連報告書や学術論文などをもとに、「フードシステムは人間の健康と地球の健康にどのような問題をもたらしているのか」「今、行動を起こさなければどうなってしまうのか」「では、人間の健康と地球の健康を維持・改善するために、どのようなアクションが必要なのか、自分に何ができるのか」などの問いに対して、具体的にわかりやすく答えてくれています。
彼女は、世界で最も知名度も評価も高い五大医学雑誌の一つランセット (Lancet) 誌の「食べ物と地球と健康についてのイート・ランセット委員会報告書」の委員も務めました。人間の健康、農業、政治学、環境などさまざまな分野で活躍している専門家たちと 2 年間かけて、地球の持続可能性の範囲内で、人間の健康を維持・向上させることができる食事が可能かどうかを検討し、報告書としてまとめました。これは、持続可能なフードシステムから健康的な食生活を実現する方法を科学的に検証した初めての報告書で、「気候変動におけるパリ協定」で定められた地球の気温上昇を 1。5 ℃に抑える一方で、将来の人口の栄養必要量を満たすことができるのか、できるのならどのような食事なのかを具体的に示しました。「プラネタリー・ヘルス・ダイエット」とも呼ばれるこの食事法は、彼女らのこのような活動から生まれました。
もちろん、すべてのデータやエビデンスが揃い、世界に通じる絶対的な解決方法がわかっているわけではありません。このイート・ランセット委員会報告書についても、決して反対意見や批評がなかったわけではありません。逆に、彼女はそれらの意見や批判に真摯に向き合い、よりよい「プラネタリー・ヘルス・ダイエット」を実現するため、「食の大転換 (Great Food Transformation) 」を実現するために、さらなる研究を進めています。
私は手島さんの訳をチェック、加筆修正しながら、何度も膝をうちました。というのも、この本には、私が世界の現場で感じた問題意識や疑問についてデータや情報を提供し、国の事例をあげて詳述してくれていたからです。彼女のいくつかの論文、イート・ランセット委員会報告書などは以前に読んでいましたが、この本は私の断片的な知識を埋め、私の世界でのさまざまな経験を「フードシステム」と「地球の健康」の視点から繋げてくれました。いわば、私のばらばらの知識や経験の点 (ドット) を線で結びつけてくれたのです。
私の専門は医療・公衆衛生で、中南米、アジア、アフリカのさまざまな国で感染症対策、母子保健、地域保健、災害支援に携わってきました。そこには、ブラジル東北地方の貧しい農村やアマゾン流域の村々で共存する熱帯病と慢性疾患、アフリカの角と呼ばれる地域の干ばつで広がる栄養不足と感染症、中部アフリカで発生したエボラ熱、インドネシアの森林火災で広がったヘイズ災害、中央アジアにあるアラル海周辺で起こった環境災害などもありました。私はそこで人々の健康や病気を見つめ、その診断や治療、そして予防などに従事したのですが、このミクロな視点と対策でできることは限られ、常に達成感よりも無力感や失望感に苛まれたものです。というのも、これらの問題の背景には、ブラジル東北地方やアマゾンの自然の乱開発やモノカルチャーがあり、アフリカの角の地域での異常気象や凶作、アフリカやインドネシアでの森林伐採があり、旧ソビエト連邦での社会的実験とも呼ばれた大規模灌漑農業などがあったからです。この本を読みながら、私が経験したこれらの問題には、フードシステムが大きく絡み、その地域のみならず、地球の健康にも影響を及ぼしていたことへの理解を深めました。
地球環境の問題、とくに地球温暖化は、すでにわれわれの日常に目に見える形で影響を及ぼしています。私は原稿執筆時点 (2022 年 1 月)、スイスに住んでいますが、そこにある数々の氷河が地球温暖化の影響をまざまざと示しています。例えば、ベルニナ列車が通るモルテラッチュ (Morteratsch) 駅は、100 年ほど前までは、駅前にモルテラッチュ氷河の末端があり、電車を降りればすぐに氷河が見物できる名所となっていました。それが温暖化の影響で、氷河はどんどん溶けていき、今では駅から約 1 時間歩かなければ見ることはできません。
日本でも、毎年のように起こる異常気象、気象災害を見ると、地球がおかしなことになっていることを肌で感じるのではないでしょうか。ファンゾ教授の言うように、「地球は繋がっている」。これから日本も、ますます地球温暖化の影響を受けるかもしれません。
この本は、自分の健康、栄養、食事を見つめながら、世界のフードシステム、そして地球環境、地球の健康についても知識を深め、どうすればよいのかを考えさせてくれる、確かに「すばらしい本」です。
社会人、大学生はもちろん、中高生にも読んでもらえるよう、むずかしい用語、日本では聞きなれない言葉には、脚注をつけるなど、わかりやすく訳すように心がけました。
自分の「食卓」を見る目が変わり、地球のために自分も何かできるかもしれない。そんな気持ちにさせてくれる本です。是非、手に取って読んでみてくださいね。
國井 修
著者まえがき
研究生活をスタートさせた当初、私は今のような場所にいるとは想像もしていませんでした。私は来る日も来る日も実験室で研究をしていました。私の学士号、修士号、博士号はすべて栄養学に焦点を当てたもので、分子レベルでの研究でした。私は長年、研究室で、液体をチューブに移動させながら、遺伝子と栄養素の相互作用を調べていました。白い巨塔の中の実験室に閉じこもって、世界の路上で起こっていることには目もくれず、栄養生化学の難解で微小な問題について研究していたのです。
分子栄養学で博士号を取得し、その後、免疫学のポスドクを経て、私はより身近な結果を見たくなったので、より人を対象とした研究をしたいと考えるようになりました。そこで私は「実験室」でのサイエンスから離れ、一時ドリス・デューク慈善財団でグローバルな公衆衛生の問題に取り組みました。当時、医学研究のディレクターだったイレーヌ・ギャリン氏が私の面倒を見てくださり、エイズ、結核、マラリアなどのグローバルヘルス分野で最先端の研究を行っている多くの専門家を紹介してくれました。私たちは、アフリカを訪れ (私の初のアフリカ大陸体験)、南アフリカやウガンダでエイズがどのように蔓延しているかを目の当たりにしました。そして、私はこれを最後に実験室での研究を中止することにしました。
ドリス・デューク慈善財団での経験を経て、私は経済開発と貧困の専門家として世界的に有名なジェフリー・サックス教授と、コロンビア大学地球研究所の彼の大規模なチームと仕事をするようになりました。その後、パートナーとともにケニアに移住し、ミレニアム開発目標センターの東部と南部アフリカの栄養地域アドバイザーとして、政府との栄養政策の立案や、地元の村でのプログラムの実施などに携わりました。持続可能な開発の中で栄養がどのように位置づけられるのか、また、農業、経済、水、環境、ジェンダー・ダイナミクス、健康といった他の分野とどこでどのように結びつくのか、より広い視野で考えることを学びました。私は、この分野に熱心に取り組む知識豊富な専門家と仕事をする機会に恵まれ、国際開発に取り組むことになったのです。世界食糧賞受賞者であるペドロ・サンチェス氏といった人々を紹介していただき、彼らから農業の世界を学ぶことができました。シェリル・パーム氏とグレン・デニング氏は、食料安全保障、ひいては国家安全保障にとって、環境と生態系がいかに重要であるかを教えてくれました。研究、政策、実践の境界線上で働くことで、栄養が人々の健康、生活、幸福に与える影響や効果の全容が見えてきました。
約 10 年間、どっぷりとアフリカで働いた後、私は、東ティモール、ネパール、ミャンマーなど、アジアでも調査を始めました。このとき、私は、若い頃に過ごした無菌実験室とはかけ離れた、「現場」でのフィールドワークが好きだということに気づいたのです。私が学んだことの多くは、農家の人々、母親、父親、そしてその子どもたち、さらにはグローバルな研究に精力的に取り組んでいる学生やポスドクとの会話から得られたものです。彼らとともに過ごせたことを光栄に思い、感謝しています。
アフリカやアジアの特定の地域を中心に活動した私は、その後よりグローバルな視点でフードシステムの課題に取り組むようになり、これまでコロンビア大学の准教授、国際生物多様性センター、国連世界食糧計画の REACH パートナーシップ、国連食糧農業機関などを歴任してきました。フードシステムに関わる多くの関係者と仕事をすることで、栄養が気候変動や経済成長、そして持続可能な開発にどのように関連しているかについて、新たな視点と洞察を得ることができました。私は、本章で紹介する「世界栄養報告書」、「フードシステムに関するハイレベル専門家パネル」、「イート・ランセット委員会」など、この分野や本書に影響を与えた重要かつ世界的な委員会や出版物に関わる機会を得ました。2012 年には、プレミオ・ダニエル・カラッソ賞を受賞しました。これは、長期的な人間の健康のための持続可能な食料と食生活に関する私の研究を認め、奨励するものです。
2015 年、私はジョンズ・ホプキンス大学の 11 人目のブルームバーグ特別教授に就任しました。私は、ニッツェ高等国際問題研究大学院、バーマン生命倫理研究所、ブルームバーグ公衆衛生大学院国際保健学科の三つの異なる機関で共同研究を行っています。ジョンズ・ホプキンス大学は、おどろくほど統合的で最先端の場所で、私は、疫学者、倫理学者、政治学者など、世界的に著名な方々とチームを組んで、フードシステムにおける壮大な課題に取り組むことができています。
私のこれまでのキャリアの多くは、フードシステム (農場から食卓まで、食べ物に関わるすべてのもの)、食生活、人間の健康、そして気候危機の間の複雑な相互作用の調査です。とくに私は、健康的で持続可能かつ公平な食生活を促進するために、フードシステムをどのように変えることができるかを研究してきました。その過程で、私たち人間と地球の未来の健康を確保するために、個人として、また地域、国、国際社会の一員としてとるべき行動について、多くのことを学びました。この本では、私が世界各地の経験から学んだことを整理し、私たちが直面している問題を分析し、その問題を解決できると確信する方法を提示しています。「食」は、個人の健康や多様な文化を日々形成する生命線であるので、どの社会でも「食」を大切にしています。とくに、武力紛争や干ばつ、極端な環境の変化や人為的な事象によってシステムに衝撃が生じた場合、適切な量や質の食べ物がなければ、事態は急速に悪化してしまいます。その生産過程、店頭に並ぶまでの距離、食品包装の数など、食べ物に関するあらゆる決定は、物理的環境から、それが支える私たちを含む何百万もの植物、昆虫、動物に至るまで、地球環境に深く甚大な影響を与えています。
この本を書いている間に、新型コロナウイルス感染症の原因となる SARS-CoV-2 ウイルスが世界中に燃え上がる炎のように急速に広がり、パンデミックの中で、私たちがどのような状況にあるのかを知る手がかりはほとんどありませんでした。私たちは、この神の怒り (wrath) の始まりにいるのか、真ん中にいるのか、それとも終わりにいるのでしょうか? フードシステムに関連した人獣共通感染症 (動物と人間の間で感染する感染症) として始まったこの病気は、世界のヘルスシステムを根底から揺るがし、世界のフードシステムや金融システムなど、他のあらゆる分野にも影響を与えることが明らかになりました。動物と人間の関係に変化をもたらす最大の要因は、私たち人間の活動であり、その多くは農業と関係しています。これほど短い期間で、地球と生物種の多様性を支える生態系を大きく変えた種は、人間以外にはありません。
新型コロナウイルス感染症が人から人へ、地域から地域へ、そして国から国へと広がっていく中で、私たちがいかに相互に繋がっているか、つまり、一人の人間に起こったことが何千、何百万人にも影響を与えることになるのか、また、国際的な食料供給のような巨大なエンジンが最終的にいかに壊れやすいものであるかが明らかになりました。目先の食料不安や飢餓に対処することができなければ、今だけでなく、今後 1 年から 3 年の間に世界各地でパンデミックが広がり、変異していく中で、新型コロナウイルス感染症への取り組みの進展が阻害されるかもしれません。国連世界食糧計画によると、新型コロナウイルス感染症の経済的影響により、急性の食料不安に直面する人々の数が大幅に増加すると予測されています。
肥満やその他の非感染性疾患は、新型コロナウイルス感染症による入院の重要なリスクファクターとされていて、無症状の人でも重篤な合併症を引き起こす可能性があることがわかってきました。また、新型コロナウイルス感染症は、非効率的で不公平な食品の流通や、食肉加工センターで働く人々などへの不十分な配慮といったフードシステムの欠点を明らかにし、私たちが健康的な食品を入手することをよりいっそう難しくしています。
料理や食事は、基本的な生命維持のためと考える人もいれば、楽しみの時間、さらには芸術と考える人もいます。私が長年にわたって学んできたこと、そして新型コロナウイルス感染症のパンデミックから学んだことは、私たちは食べ物によって密接に結びついているということです。テレビで放送されている料理やグルメ番組の多くは、食事の準備を、すばらしい食事のための手段としてだけでなく、華やかなホストやコンテストなどのエンターテイメントとしても提供しています。私たちは一日のかなりの時間を、何を食べるかについて考え、食品を購入、調理、食べ、残ったものを片付けることに費やしています。世界には、水を得るために少し遠くまで歩き、食べ物を栽培し、動物を飼育している地域もあります。私たちのあらゆる行動や決定は、国を超え、ときに世界にまで波及します。
ジョーン・ディディオン氏は “Goodbye to All That” というエッセイの中で、「物事の始まりを見るのは簡単だが、終わりを見るのは難しい」と書いています。フードシステムと、私たちが今、世界の中で置かれている状況を考えると、確かにすべてにおいて終わりが見えにくくなっています。私たちの食事の選択が地域や世界にどのような影響を与えるのか、また地球がどのように反応し、私たちをどう変えていくのかというプログラムはまだありません。新型コロナウイルス感染症の収束が見えたとき、人間社会はどのような姿になっているのでしょうか。次のパンデミックや気候変動の影響を受ける前に、私たちはよりよい情報を得て、準備を整え、より柔軟に回復する力を持つことができるのでしょうか。私は、人間がもつ忍耐力、創造力、そして創意工夫によって、きっと乗り越えることができるだろうと信じています。
私たちが直面している食料安全保障の課題は、決して些細なものではありません。地球市民として、私たちは、気候変動や、パンデミック、政治的激変といった危険の中で、重大な岐路に立たされています。混沌とした状況の中で、公平で健康的かつ持続可能なフードシステムを実現するチャンスは大きく広がっていますが、そのチャンスを生かすためには、質の高い科学をこれまで以上に早く政策に反映させる必要があります。世界中の多くの科学者や研究者たちが、私たちが直面している問題を解決し、正しい道へと導いてくれていることを考えると、私は楽観的になることができます。研究は、行動や政治に大きな変化をもたらすことができます。今この瞬間にも、多くの研究者が現場や農場、研究室、会議室、教室などで精力的に活動しており、国をまたいでフードシステムが生み出す問題の要因を明確に理解し、個人、組織、民間企業、国家が取り組むべき解決策を導き出しています。この本は、ある意味で、このような研究者とこの本で紹介するコンセプトに自分の考えや研究を提供してくれた多くの科学者たちへの感謝の気持ちを表わしたものです。フードシステムにおける難しい課題に対して、私の考えを変えてくれた彼らにはいくら感謝してもしきれるものではありません。彼らの活動が、本書を読んでくださる皆さんの意識を高め、自分自身の選択を熟慮するきっかけとなることを願っています。
私たちは、フードシステムを持続可能で、公平で、誰にとっても健康的なものにし、誰ひとり取り残さないものにするためにどうしたらよいか、理解するに至っていません。研究者や科学者たちは声を上げ、政治家、企業経営者、そして私たち一人ひとりがそれぞれの役割を果たし、世界が作り出した溝をきちんと埋めていかなければなりません。そしてここには、予測可能な未来を描き、より持続可能な世界に向けて前進するチャンスがあります。私たち自身の健康と地球との調和、共存を目指していきましょう。
目次
- 序章 もうバナナが食べられなくなる?
- 食と健康、そして公正と環境の繋がり/食事を変えれば、地球が変わるのか?
- 第1章 私たちは何を食べているのか、何を食べさせられているのか?
- 私たちの食生活がもたらすもの/食料安全保障/●COLUMN 加工食品は体に悪いか?/食生活の変遷/低栄養と栄養バランスの悪い食生活/子どもの低栄養/肥満/低栄養と肥満の二重負荷/微量栄養素欠乏症/社会的規範や文化的伝統/●訳者コラム:栄養不良を図解する
- 第2章 カンボジアでカレーを作ると、テキサスで竜巻が発生する?
- 双方向の関係/工業型農業/農業環境が変化すれば、食生活も変化する/温暖化する地球/農業の多様性の低下/●COLUMN 世界のフードシステムを揺るがすもの/水問題/漁業と気候変動/テクノロジーを生かした作物/収穫後の保存と加工/流通・マーケティング・小売/●訳者コラム:農業人口の減少と高齢化にどう立ち向かうか?
- 第3章 私たちには間違った食べ方をする権利があるだろうか?
- 食費の不公平/食環境における不公平/肉の生産と消費における不公平/●COLUMN 肉を食べるときに考慮すべきいくつかのポイント/女性に対する不公平/●訳者コラム:持続可能な食「べジマンデー献立」の実践
- 第4章 よい政策はよい食品を生み出すのか?
- 農業システムの多様性を向上させる/栄養に配慮した農業/食料安全保障と栄養のためのサプライチェーンの再構築/食環境の選択アーキテクチャを変える/不健康な食品の宣伝・販売の制限/プラネタリー・ヘルス・ダイエット/健康的で持続可能な選択を目指して/財政政策の強化/意思決定者に情報を提供するためのエビデンスとデータの強化/●COLUMN 新しいグローバル情報ツールとしての/フードシステム・ダッシュボード/栄養とフードシステムのための資金調達/トレードオフの検討/●訳者コラム:日本人の食事とプラネタリー・ヘルス・ダイエット
- 第5章 一人ひとりが地球のためにできることは?
- 健康的で持続可能な食生活を目指して/持続可能性と健康のバランスを考慮した食事の選択/ライフスタイルに合わせた食事の選択/食の実践と意識向上のために/フードリテラシーと料理スキルの向上/●COLUMN 食品廃棄物を減らすには?/変革のためのアドボカシー/あらためて、食事を変えれば地球が変わるのか?/●訳者コラム:日本人の財産としての和食
書誌情報など
- 『食卓から地球を変える—あなたと未来をつなぐフードシステム』
- 著:ジェシカ・ファンゾ
- 訳:國井修・手島祐子
- 紙の書籍
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予価:税込24200円(本体価格2200円)
- 発刊年月:2022年3月
- ISBN:978-4-535-54030-9
- 判型:四六版
- ページ数:240ページ
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関連情報
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