(第20回)期間計算のルールを押さえておこう

民事弁護スキルアップ講座(中村真)| 2022.06.14
時代はいまや平成から令和に変わりました。価値観や社会規範の多様化とともに法律家の活躍の場も益々広がりを見せています。その一方で、法律家に求められる役割や業務の外縁が曖昧になってきている気がしてなりません。そんな時代だからこそ、改めて法律家の本来の立ち位置に目を向け、民事弁護活動のスキルアップを図りたい。本コラムは、バランス感覚を研ぎ澄ませながら、民事弁護業務のさまざまなトピックについて肩の力を抜いて書き連ねる新時代の企画です。

(毎月中旬更新予定)

1 期間の計算の重要性

法律上、期間計算が必要となる場面は非常に多いのですが、法文上の定めの理解しにくさもあって、つい雑駁に捉えがちです。もっとも、期間計算を誤ると大きな弁護過誤につながりかねません。

誰しも、時効期間や出訴期間の切迫した事案の相談を受け、あるいは依頼を受けて青くなったことはあるはずです。また、具体的事案を前に、「1ヶ月」や「14日」が果たしていつからいつまでの期間を指すのかの判断がつきづらいということもあるかもしれません。

「期間」は、ある時点からある時点までの時間の継続をいいます(有斐閣『法律学小辞典(第5版)』179頁)。法律の世界では、時効や除斥の期間、契約で定められた期間など、「期間」が問題となる場面は非常に多く、権利や義務の効力の終わりや何らかのアクションを起こす時間的限界を画する大切な役割を果たしています。

その分、法律相談で問われたり、受任事件の処理で問題となったりすることも多く、これを間違えることは相談者や依頼人、ひいてはその相談や依頼を受けたあなた自身にも大きな不利益をもたらしかねません。その一方で、この点をきちんと押えていない実務家も実は少なくないのです。

そこで、今回は、民事上の期間計算について、ルールをきちんと押さえておきましょう。

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中村真(なかむら・まこと)
1977年兵庫県生まれ。2000年神戸大学法学部法律学科卒業。2001年司法試験合格(第56期)。2003年10月弁護士登録。以後、交通損害賠償案件、倒産処理案件その他一般民事事件等を中心に取り扱う傍ら、2018年、中小企業診断士登録。2021(令和3)年9月、母校の大学院にて博士(法学)の学位を取得(研究テーマ「所得税確定方式の近代及び現代的意義についての一考察-我が国及び豪・英の申告納税制度導入経緯を中心として-」)。現在、弁護士業務のほか、神戸大学大学院法学研究科にて教授(法曹実務)として教壇に立つ身である。

著者コメント  今回は単発のテーマとして、基礎的・基本的な事項であるにも関わらず、法学部生・ロー生、実務家を問わず法制度上のメカニズムが必ずしも理解されていない民事上の期間計算について取り上げてみました。弁護過誤にならないように、きちんと押さえておきたいものですね。