座談会:実際,学術論文にどう向き合っている?(経済セミナー2022年8+9月号)
自分で研究テーマを決めて論文を書く際には、関連する既存論文を読む必要がある。とはいえ慣れないうちは、どのようにテーマを選べばよいかも、どんな論文を読めばよいかもわからない。論文を読むこと自体も大変だ。今回は多様な分野を専攻する若手研究者が集い、各々の学部生の頃からの苦労や工夫、現在の研究で取り入れている方法などを議論しながら共有することで、学術論文とうまく付き合うためのヒントを提供したい。
1 はじめに
— 今回は、若手研究者の皆さまが実際に学術論文をどう読み進め、自身の研究につなげているかなど、幅広くディスカッションしていきたいと思います。まずは、専門分野や研究テーマなどを交えて自己紹介からお願いします。
岸下 東京理科大学経営学部ビジネスエコノミクス学科で講師をしている岸下です。主に、ミクロ経済理論やゲーム理論を用いて具体的な社会現象を分析する応用理論研究に取り組んでおり、中でも政治現象をゲーム理論で分析する「政治の経済学」と呼ばれる分野が専門です。
高山 高山です。ニューヨーク州立大学オルバニー校で助教授として働いています。専門は国際経済学で、特に海外直接投資 (FDI)に関する研究に取り組んでいます。たとえば、企業が海外に工場などを建てる際にどう計画するか、海外からの投資が投資を受け入れる国の社会厚生などにどんな影響を及ぼすか、などといったテーマで研究しています。
菊池 マサチューセッツ工科大学 (MIT) の博士課程に在籍中の菊池です。特に国の発展と衰退に関心があり、マクロ経済学、労働経済学、国際貿易、政治経済学の 4 つの分野を掛け合わせていろいろな研究をしていきたいと考えています。
井上 東京大学大学院経済学研究科博士課程に在籍している井上です。主に、教育経済学や労働経済学の中で、特にジェンダーに関するトピックを研究しています。たとえば、日本における男女間の大学進学格差などのテーマに関心を持っています。