(第13回)パーカー太陽探査機のミッション

地球惑星科学の地平を求めて(半揚稔雄)| 2023.05.15
お馴染だと思っているはずの地球や宇宙も,自然科学の目で見ると実に多様な顔を見せてくれます.この連載では,地球を中心とした様々な対象や現象について,最近の知見をもとに改めて解説します.

(毎月中旬更新予定)

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パーカー太陽探査機 (Parker Solar Probe) は太陽コロナの観測を目的として,太陽面から $8.86R_s$ ($0.04$ 天文単位,$590\,\t{万}\t{km}$) への到達が計画されている.この野心的なミッションは,$2008$ 年 $5$ 月 $1$ 日,ジョンズ・ホプキンス大学応用物理学研究所により提案され,$2015$ 年の打ち上げを目指して開発が進められてきた.一時は,アメリカ議会の予算承認の遅れなどにより打ち上げは先延ばしとなっていたが,$2018$ 年 $8$ 月 $12$ 日の未明に,フロリダ州ケープ・カナベラルの発射場から打ち上げられた.この計画は $2017$ 年までソーラー・プローブ・プラス (Solar Probe Plus) と呼ばれていたが,同年 $5$ 月に太陽物理学者ユージン N.パーカー博士を称えて現在の名称に変更されている.

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半揚稔雄(はんようとしお) 1947 年,福岡県に生まれる.その後,北海道札幌市にて子供時代を過ごす.小学校 4 年の 10 月に,ソヴィエト連邦 (現在のロシア) が「世界初の人工衛星スプートニク 1 号を打ち上げた」とのニュースに接して,宇宙に興味を覚える.以来,宇宙飛行に関心を寄せ,物理学で理学士となるも,これが高じて防衛大学校,東京大学宇宙航空研究所(現・JAXA宇宙科学研究所)などで一貫して宇宙飛翔力学の研究に携わる.この間に,東京大学から工学博士の学位を授かる.

著書:『ミッション解析と軌道設計の基礎』(現代数学社,2014 年),『惑星探査機の軌道計算入門 ―― 宇宙飛翔力学への誘い』(日本評論社,2017 年),『入門連続体の力学』(同,2017 年) ,『つかえる特殊関数入門』(同,2018 年) など.