(第15回)激しかった太陽系形成

地球惑星科学の地平を求めて(半揚稔雄)| 2023.07.14
お馴染だと思っているはずの地球や宇宙も,自然科学の目で見ると実に多様な顔を見せてくれます.この連載では,地球を中心とした様々な対象や現象について,最近の知見をもとに改めて解説します.

(毎月中旬更新予定)

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これまで太陽系の惑星は,太陽形成後に残ったガスや塵で構成される原始太陽系円盤の中で整然と物質の凝集が進み,大きく成長したと考えられてきた.しかし近年,初期太陽系の名残と見られる隕石の研究から,太陽系の惑星は混沌とした状況の中で激しく衝突と溶融,再形成を経て誕生した可能性が浮上してきた.これを検証すべく,原始惑星が壊れて中心核がむき出しになり,全体が金属と見られる小惑星プシケの探査計画が開始された.

アエンデ隕石

1969 年 2 月 8 日の朝,メキシコ北部上空で巨大な火球が大爆発を起こし,数千個の破片となって地表に降ってきた隕石雨の一つがアエンデ隕石 (図 1) で,それには太陽系最古の物質 (45.66 億年前) が含まれていたことで,にわかに注目を浴びることになった.それは,ppm レベル以下の超微量元素を検出できる分析機器が開発されたことにより,2009 年に,MIT のワイス (Ben Weiss) らの研究チームが,それに残る磁場の痕跡を見つけたのが発端である.

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半揚稔雄(はんようとしお) 1947 年,福岡県に生まれる.その後,北海道札幌市にて子供時代を過ごす.小学校 4 年の 10 月に,ソヴィエト連邦 (現在のロシア) が「世界初の人工衛星スプートニク 1 号を打ち上げた」とのニュースに接して,宇宙に興味を覚える.以来,宇宙飛行に関心を寄せ,物理学で理学士となるも,これが高じて防衛大学校,東京大学宇宙航空研究所(現・JAXA宇宙科学研究所)などで一貫して宇宙飛翔力学の研究に携わる.この間に,東京大学から工学博士の学位を授かる.

著書:『ミッション解析と軌道設計の基礎』(現代数学社,2014 年),『惑星探査機の軌道計算入門 ―― 宇宙飛翔力学への誘い』(日本評論社,2017 年),『入門連続体の力学』(同,2017 年) ,『つかえる特殊関数入門』(同,2018 年) など.