暴行罪の「通説」に潜む問題と その乗り越え方――本企画が目指すもの(樋口亮介)(特集:続・刑法の「通説」――そこに潜む問題)

特集から(法学セミナー)| 2023.05.12
毎月、月刊「法学セミナー」より、特集の一部をご紹介します。

(毎月中旬更新予定)

◆この記事は「法学セミナー」821号(2023年6月号)に掲載されているものです。◆

特集:続・刑法の「通説」――そこに潜む問題

通説といえども、なかには矛盾や齟齬など、
乗り越えるべき課題を抱えているものもあります。
本特集では、通説とされる考え方に潜む問題を明らかにすることで
刑法学習の視野を一段と深め、広げます。

――編集部

本特集は「法学セミナー」821号(2023年6月号)でご覧ください。

はじめに

1 刑法総論の通説企画

本誌で1年前に実施した「通説」企画は、団藤・大塚が通説とされていた時代の後、通説が確立されないまま議論が多岐にわたった結果、何が通説か見えにくくなったとの問題意識から、何が通説かを同定する作業を中心とした。

企画を通じて、同定された「通説」には問題が潜んでいることも同時に明らかになった。例えば、因果関係=危険の現実化と捉える新・通説の中には、①従前の相当因果関係説と同質の議論として、実行行為の帯びる危険を特定した上で、その危険が現実化したかを問う2ステップ判断と、②従前の相当因果関係説とは異質の議論として、実行行為と結果の結びつきについて諸事情を総合考慮する1ステップ判断が含まれているものの、この判断構造の相違が意識されていないとの問題が明らかにされた(大関論文)。

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