人間を数値化する最適な方法とは?

海外論文サーベイ(経済セミナー)| 2023.09.27
 雑誌『経済セミナー』の "海外論文Survey" からの転載です.

(奇数月下旬更新予定)

Ball, I.(2022) “Scoring Strategic Agents,” Working Paper.$\def\t#1{\text{#1}}\def\dfrac#1#2{\displaystyle\frac{#1}{#2}}\def\bi#1{\boldsymbol{#1}}$

奥村恭平

1 数値化社会の到来

ある個人に関するさまざまな要素が何らかのアルゴリズムによって 1 つの数値 (スコア) に集約され、そのスコアに基づいて重要な意思決定が行われることがある。たとえばアメリカでは、個人のお金に関わる信用度がクレジットスコアとして数値化されており、クレジットカードや住宅ローンなどの審査に用いられる。クレジットスコアが高いと、条件の良いクレジットカードが手に入り、低い金利でローンを組むことができる。アメリカにはクレジットスコアを計算する 3 つの信用情報機関1)が存在し、各信用情報機関は消費者のクレジットカードの返済履歴や各種ローン、公共料金、家賃の支払い履歴などの「クレジットヒストリー」と呼ばれる情報を収集したうえで、FICO 社が提供する独自のアルゴリズムを用いて、個人の信用度を示すクレジットスコアを計算し、情報を必要とする主体 (たとえばクレジットカード会社) に提供する2)。クレジットスコアの算出方法の詳細は完全には明らかにされていないが、どういった要素が考慮されるか (返済履歴、借入残高、信用履歴の長さ、新規借入、クレジットの種類や構成)、各要素がどの程度の比重で考慮されるかといった情報は公開されている。クレジットスコアは 300 点から 850 点の間の値をとり、たとえば、740〜799 点は “Very good”、800〜850 点は “Exceptional” などと格付けされる。

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脚注   [ + ]

1. Experian、TransUnion、Equifax の 3 社である。
2. 各信用情報機関が持つクレジットヒストリーの情報は異なるため、信用情報機関ごとに異なるクレジットスコアが算出されうる。