(第4回)生殖腺と外性器の性が異なることもある:アンドロゲン不応症と先天性副腎皮質過形成

ヒトの性の生物学(麻生一枝)| 2023.12.15
LGBTQ,少子高齢化,男女共同参画など,議論の的となっている社会テーマの多くは,ヒトの性と関係しています.「自分がどのようにして (how),自分になったのか」を知ることは,性的マイノリティの自己の確立に大きく影響し,また,年齢に伴う卵子や精子の老化は,私たちがどのようにキャリア形成とプライベートな生活 (結婚や家庭をもつなど) を両立していくかを考える上で,避けては通れない生物学的事実です.しかし現実には,様々な議論が,生物学抜きで,あるいは生物学の誤った解釈の下におこなわれており,責任ある立場の人々の誤った言説もあとを絶ちません.
このシリーズでは,私たちの人生に密接に関係する「ヒトの性に関する生物学的知見」を紹介していきます.

(毎月中旬更新予定)

前回は、典型的な男女像とは異なる体をもって生まれてくる人がいること、医学的には性分化疾患とよばれる「性染色体、生殖腺、解剖学的な性の発達が、先天的に非定型的な状態」で生まれてくる人がいることを、皆さんにお話しした。そして、性分化疾患のうち、性染色体数の異常に関わるものを紹介した。今回は、他の性分化疾患の代表的な例を紹介していこう。

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麻生一枝 サイエンスライター,成蹊大学非常勤講師. お茶の水女子大学理学部数学科卒業,オレゴン州立大学動物学科卒業,プエルトリコ大学海洋生物学修士,ハワイ大学動物学Ph.D. (研究テーマは魚類の性分化・性転換).「健全な科学研究における統計学や実験デザインの重要性」「ジェンダー研究における生物学の重要性」という 2 つのテーマで活動してきている.著訳書に『科学でわかる男と女になるしくみ』(SBクリエイティブ),『生命科学の実験デザイン』(共訳,名古屋大学出版会),『科学者をまどわす魔法の数字,インパクト・ファクターの正体---誤用の悪影響と賢い使い方を考える』(日本評論社),『データを疑う力』(東京図書出版) など.