ストライキについて(中窪裕也)
法律時評(法律時報)| 2024.01.26
世間を賑わす出来事、社会問題を毎月1本切り出して、法の視点から論じる時事評論。 それがこの「法律時評」です。
ぜひ法の世界のダイナミズムを感じてください。
月刊「法律時報」より、毎月掲載。
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(毎月下旬更新予定)
◆この記事は「法律時報」96巻2号(2024年2月号)に掲載されているものです。◆
1 ストライキへの注目
昨年(2023年)は、ストライキ(以下、ストという)が久々に注目を集めた年であった。百貨店を運営する株式会社「そごう・西武」の労働組合が、同社の売却をめぐる問題から、8月31日に西武池袋本店でストを実施し、わずか1日ではあるが、大手百貨店では61年ぶりのストとして大きく報道された。また、年末にはジェットスターの労働組合のストが行われ、一部の航空便に欠航が生じた。
周知のように、昔は日本でもストがしばしば発生していた。労働争議統計調査によれば、争議行為をともなう労働争議の数は、何千件もあった1970年代や80年代には及ばないものの、1990年でも1698件を数えていた。しかし、その後、2000年は305件、2010年は85件と顕著に減少し、直近の2022年は65件で、14年連続で100件を下回った。この間、2004年のプロ野球労組のストは社会に多大なインパクトを与えたが、それ以外はごく散発的で、春闘でもストが行われることは稀となった。最近では、2019年に東北道・佐野サービスエリアで行われたストが、かなり話題となった程度である。
上記そごう・西武のストが、このような傾向を大きく変えるとは思われない。ただ、それが世論へのアピールを含めた「ストの力」を再認識させることになったのは確かであろう。