『やさしい会社法講義』(著:舩津浩司)
はしがき
この本は、法学セミナーで2019年4月から2021年9月まで連載していた「やさしい会社法」の原稿を基に、大幅に加筆・修正を加えて、会社法を一通り学べるような教科書の形にしたものです。
連載から一貫して掲げている目標は、会社法を初めて学ぶ人にも、また、会社での勤務経験のない人にもわかりやすく、挫折しないで勉強できる内容とすることであり、そのために、一貫したストーリー展開を通じて会社法の内容を平易に説明することを心がけています。
もっとも、本書のストーリーは、多分に現実離れしたところがあり、その設定自体、「それはどうなの?」と我ながら思うところも多数あります。そもそも、主人公(茂文)の営む事業が落花生の卸売業である必要性はこれっぽっちもありません。これは、先に述べた連載自体が、同じく法学セミナーのリレー連載企画における筆者の担当回(舩津浩司「企業グループと組織再編」法セミ718号〔2014〕74-80頁)の場面設定を拡張するのが話が早いだろうというところからスタートした企画であり、そのリレー連載企画の原稿を執筆する際には、食事にもお菓子にも使える食材を取り扱っている業者にするのが都合がいいということで「ピーナッツ」を商号に入れたという、完全に行き当たりばったりな経緯によるものです。ですので、ストーリー設定のリアリティについてはあまり深く考えずに読んでいただけると幸いです。また、会社法のルールは長い歴史を経て形成されたものであり、時代遅れの感の否めないルールも存在するところ、現代の会社の舞台を借りてその説明をすることに違和感を覚える読者がいらっしゃるかもしれません。この点については、必要に応じて該当箇所で注意喚起をしているつもりですが、そういった、現在の会社の実務の趨勢とは異なることをストーリーの中の会社がやっている可能性があることは心に留めておいていただけると幸いです。
本書が成るにあたっては、上記リレー連載企画と筆者単独での連載の開始時点で法学セミナーの編集長でいらした柴田英輔・現日本評論社取締役には大変お世話になりました。本書の編集もご担当いただくことになり、筆者の「あれがやりたい、これがやりたい」というわがままにも一つひとつ丁寧にご対応いただきました。本書が少しでもわかりやすいものとなっているとすれば、柴田さんのご尽力の賜物です。
そのわがままの1つに、「“やさしい”と銘打っておきながらコワモテの表紙では様にならない」というものがあり、これについては、淵上恵美子さんにキャラクターや本文レイアウトのデザインをお願いしました。おかげさまで、「会社」や「法律」といった、世間一般にはお堅いイメージのあるテーマにもかかわらず、思わず手に取ってみたくなる素敵なデザインの本が出来上がったことに感謝しております。
2024年2月
舩津浩司
第0講 2つのプロローグ―この本の読み方
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目 次
第0講 2つのプロローグ――この本の読み方
第1講 会社とは、会社法とは――会社(法)をめぐる基礎知識
第2講 赤井銀行と関株主の皮算用――株式会社法総説(株主有限責任と株主の残余権者性、株式の譲渡性)
第3講 滋と関の扱いの差――株式の性質、株主権、株主平等原則
第4講 滋、息子を信用できない――機関総説、所有と経営の分離、株主総会の権限
第5講 総務部長宮島雄太の憂鬱――(上場会社の)株主総会の準備、株主提案権
第6講 株主有田大五郎、大いに存在感を示す――上場会社の株主総会の議事・議決
第7講 晴子、茂文を許せない――株主総会決議の瑕疵を争う訴え
第8講 取締役足立知希、その地位に戸惑う――経営機構総説、取締役の役割と義務
第9講 岸と宮崎、会社を裏切る?!――競業取引・利益相反取引規制
第10講 取締役広報部長の懐具合――取締役の報酬
第11講 SL食品の中期経営計画――取締役会の役割・権限とその運営
第12講 監査役浅井健一の考え――監査役の役割
第13講 会社経営は難しい――取締役の会社に対する責任
第14講 株主中島陽太郎、経営陣を訴えたい――株主代表訴訟、取締役の責任軽減、株主の差止請求権
第15講 株主中島陽太郎、株の損を取り戻したい――取締役の第三者に対する責任
第16講 SL食品、グローバル企業への道――監査役設置会社以外の機関構成とコーポレートガバナンス論議
第17講 茂文、儲けが気になる――会社の業績の測定と開示
第18講 長井社長、大盤振舞いがしたい――分配可能額規制と資本制度
第19講 関株主、株を換金したい――非上場株株式の流通と権利行使、株式の相続
第20講 SL食品は割安、ウメザキ製菓は割高?――上場株式の流通と権利行使、基準日、投資単位の括り直し
第21講 ヤスダ、金は欲しいが口出しはされたくない――株式の特徴、種類株式
第22講 晴子、追加出資する余裕がない――新株発行総説、株主割当て
第23講 SL食品、ハコ企業の悪夢――株主割当て以外の募集株式の発行等の手続、払込みの仮装
第24講 長井社長、保身に走る?!――募集株式の発行等の紛争
第25講 茂文、余裕のない晴子に配慮する――新株予約権
第26講 SL食品、上手にお金を借りたい――社債・新株予約権付社債
第27講 SL食品の大再編計画――組織再編総説
第28講 SL食品、再編内容をまだまだ検討中――組織再編の手続
第29講 赤井銀行、やられたらやり返す――会社分割における債権者保護
第30講 株主中島陽太郎、合併に不満がある――株式買取請求制度等による株主の保護
第31講 Nemoパートナーズとの仁義なき戦い――敵対的企業買収とその対抗策
第32講 伸也相談役、経営第一線への返り咲きを狙う――友好的買収と締出し
第33講 あの時、君は若かった――会社の設立手続
第34講 君とはやっとれんわ、やめさしてもらうわ――会社の解散・清算
第35講 転生したら無限責任だった件――持分会社と組織変更
関連サイト
書誌情報など
- 『やさしい会社法講義』
- 著:舩津浩司
- 紙の書籍
- 定価:税込 3,520円(本体価格 3,200円)
- 発刊年月:2024.03
- ISBN:978-4-535-52667-9
- 判型:A5判
- ページ数:584ページ
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