教育はなぜ犯罪を減らすのか?

海外論文サーベイ(経済セミナー)| 2024.05.29
 雑誌『経済セミナー』の "海外論文Survey" からの転載です.

(奇数月下旬更新予定)

Bell, B., Costa, R. and Machin, S.(2022) “Why Does Education Reduce Crime?” Journal of Political Economy, 130(3): 732-765.
$\def\t#1{\text{#1}}\def\dfrac#1#2{\displaystyle\frac{#1}{#2}}$

河原崎耀

はじめに

犯罪のピークは青少年期にある。図 1 はアメリカにおける人口 1000 人当たりに占める薬物犯、財産犯、暴行犯の逮捕者数を示しており、年齢を見ると 10 代後半にピークが来ていることがわかる。また、日本でも犯罪年齢のピークは 10 代半ばから 20 代にかけてと若年層に集中している (内閣府2010; 警察庁刑事局捜査支援分析管理官 2023)。それゆえ、犯罪と、青少年が多くの時間を費やす場である学校との関係は、これまでもたびたび議論されてきた。10 代後半から 20 代前半は多くの人が高校や大学などに通う時期と重なることもあり、感覚的に「教育水準が高いと犯罪が減るのではないか」と思っている人は多いのではないだろうか。実際、多くの実証研究によって、教育年数が延びると犯罪は減ることが示されてきた (Lochner and Moretti 2004; Machin et al. 2011;Bell et al.2016)。

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