(第7回)サラ・コナーには二重見当識がない

プロ精神科医あるあるノート(兼本浩祐)| 2024.08.14
外来のバックヤード、あるいは飲み会などフォーマルでない場で、臨床のできる精神科医と話していると、ある共通した認識を備えていると感じることがあります。こうした「プロの精神科医」ならではの「あるある」、言い換えれば教科書には載らないような暗黙知(あるいは逆に認識フレームの罠という場合もあるかもしれません)を臨床風景からあぶり出し、スケッチしていくつもりです。

(毎月中旬更新予定)

ターミネーターってご存じですか

読者のみなさんの中で『ターミネーター』という映画をご存じの方はどのくらいいらっしゃるでしょうか。未来はAIに支配されていて、人間という種の存在が地球環境に悪いと判断したAIが、人類を滅ぼすためのせん滅作業を始める近未来SFです。人類はゲリラ戦でAIに抵抗しますが劣勢で、そこに救世主が現れて形勢を逆転させるのですが、それがサラ・コナーの息子なのです。この未来の人間のリーダーを誕生させないために、サラ・コナー抹殺の使命を帯びて、アーノルド・シュワルツェネッガー扮するロボット、ターミネーターがタイム・マシンで未来から送り込まれますが、それをさらに阻止するため未来の人類のリーダーであるサラ・コナーの息子によって、ある兵士も現在へと送り込まれるのです。シリーズの最初の映画は、ざっとそんなあらすじなのですが、実はこの送り込まれた兵士とサラ・コナーから生まれた子どもが未来の救世主になる、というなんとも複雑な話です。

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兼本浩祐(かねもと・こうすけ)
中部PNESリサーチセンター所長。愛知医科大学精神神経科前教授。京都大学医学部卒業。専門は精神病理学、臨床てんかん学。『てんかん学ハンドブック』第4版、『精神科医はそのときどう考えるか』(共に医学書院)、『普通という異常』(講談社現代新書)など著書多数。